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 2013年6月28日(金)

  『実録・プロレス道 第125話』

タイガーマスク引退騒動の中、またしても新日本プロレスに大問題が起こった。
アントニオ猪木社長と坂口征二副社長の解任、新間寿氏の退陣を求める内紛、いわゆるクーデターが団体内で勃発したのだ。

「新日本は興行的には順調でも、経営陣は揉めてたみたいだね。タイガーが辞めたのも、この一件が関係してるのかも知れないよ」

会社の役員トップ3人の解任ということは、このままの体制では会社が倒産するおそれがあるということなのだろう。
試合会場は連日満員札止めなのだから、プロレス以外の事業に注ぎ込んでいるか、役員の使い込みぐらいしか考えられない。

「まあそう考えるのが妥当だよね。でも本当に猪木が社長を辞めさせられるんなら、日プロ除名の時と立場が逆になるね」

猪木が日本プロレスを除名、追放させられた時は、乱脈経営を改善するための行動が会社乗っ取りとされてしまい、中心人物であった猪木が責任をとり退団したのだ。

「使い込みとか経営の乱れじゃないとすれば、選手や社員に正当な支払いがされてないってことかな。あれだけ儲かってるのに、給料やファイトマネーが安いとかね。いずれにせよ、お金の問題だろうね」

一般の企業では、業績不振や横領、背任行為などで役員の退陣や降格、交代などは当たり前なのである。
プロレス団体とはいえ一企業なのだから、経営陣に不安があれば今回の件だって不思議ではない。

「でもトップレスラーで社長の猪木の解任は、よほどのことだと思うよ。このスキャンダルでイメージダウンしたら、興行にも響くよな」

確かに、スポーツの世界で珍しい事件だ。
プロ野球でも球団の、つまりチームの経営母体は企業であるが、役員交代だのクーデターだのあるのだろうが、あまり騒ぎにならないのはなぜなのか。
やはりプロレスにはダーティーなイメージがあるから、ここぞとばかりに叩かれるのならばとても悲しい。

「今回これだけの騒ぎになってるのは、ことの張本人が猪木だからだよ。猪木が試合をして、猪木の人気で金を稼ぐ猪木の会社なのに、その猪木が問題を起こしたからだよ。分かりやくす言えば、レスラーじゃない役員だったら大騒ぎにはならないんだよ」

なるほど、アントニオ猪木という看板の会社で、人気商品がこれまたアントニオ猪木。
おまけに社長もアントニオ猪木で、問題を起こして吊し上げられてるのもアントニオ猪木ということならば、世間が大騒ぎしても仕方がない。

「それに一番心配されてるのは、こんな扱いを受けて猪木が黙っているかってことなんだよ。自分が創った会社なのに、自由にできなかったら意味がないからね。何人か連れて新団体を創るかも知れないよ」

まったく師の言う通りだ。
新日本プロレスは、今でこそ人気団体にはなっているが、旗揚げ当初はテレビ中継もなく客入りも悪く、いつ倒産してもおかしくないと言われたものだ。
それを社長兼エースの猪木の頑張りで、ここまで成長させたのだ。
内心では、気に入らなければ出て行けばいい、何で俺の会社なのに、俺がてめえらの言うことを聞かなければならないんだと思っているに違いない。

「新日本も猪木がいなきゃ困るのは、分かりきってるんだからさ。社長を降ろして選手に専念しろっていうのも、虫が良すぎるよね」
自分が創った会社の社長をクビになりイチ選手として働けというのは、猪木だけでなく誰だって納得出来ないだろう。
となれば師の言うような、新団体設立も現実味をおびてくる。

「それにフロントの新間は降格じゃなくて退陣だろ、新間なら猪木を引き抜いて新団体を創っても不思議じゃないよ。東京プロレスや新日本も新間の働きが大きいからね」

プロレス界の過激な仕掛人、新間寿。
猪木を生かすも殺すも、そして新日本プロレスを生かすも殺すも、この男の動き次第ということになるのか。

つづく

 2013年6月21日(金)

  『実録・プロレス道 第124話』

タイガーマスク、突如引退!
この見出しを見たマサル少年は、たかだかキャラクターを変更するだけで、随分と大袈裟だなと半ばあきれていた。
しかし、事実は違ったのだ。

「いや、本当に辞めるみたいなんだよ。新日本を退団する意味で引退するらしいよ」

これは夢か?幻か?私は誰?ここはどこ?状態のマサル少年は頭の中の整理がつかず、何と言って良いものか言葉が見つからない。

「詳しいことは分からないけど、内容証明付きの文書で、引退、退団することを新日本に伝えたみたいだよ」

NWAとWWF両ジュニアのベルトの返上、マスクの返還を正式に表明したということは、紛れもない事実として受け止めなければならない。
いったいタイガーマスクの身に何が起こったのか。
マスクやリングネーム変更に関しては、蔵前のリング上で本人納得の上発表しているように見えた。
仮にキャラクターの変更が気に入らなかったとしても、退団や引退するほどの問題ではないだろう。

「もしかすると、タイガー本人は素顔に戻りたかったのかな。マスクを被る被らないで、会社と衝突したのかな。あとは、待遇面に納得してなかったとしか考えられないよ」

タイガーマスクというのは、言ってしまえばキャラクター重視のレスラーなのかも知れない。
しかし、爆発的な人気を呼んでしまった以上、中身の人間はタイガーマスクを貫くしかないのだ。
マスクを捨て、素顔でファンに″実は私がタイガーマスクです″と言っても仕方がないのだ。

「佐山はタイガーをやることに、納得してなかったとオレは思うな。レスラーになった以上素顔で勝負したかったんだろうけど、会社の命令には逆らえないしね。それで例の事件だろ、本人はタイガーを辞めて素顔に戻る絶好のチャンスだと思ったに違いないよ」

しかし新日本プロレスはマスクを脱ぐことを許さず、新たなマスクマンへの変身を強要した。
お互いに譲れぬことから、タイガーマスクは退団し引退することを決心したのだろう。

「しかし退団は分かるけど、何も引退まですることはなかったのにな。でも新日本を辞めたら、日本では出来ないから引退ってことにしたのかな」

二つのプロレス団体しか存在しない日本では、団体間の移籍などまず考えられない。
フリーになったとしても契約問題などが絡み、海外へ活動拠点を求めるしかないのだ。

「タイガーほどの人気と実力だと、新日本だって全日本には取られたくはないよ。だから、退団するなら引退しなさいってことなんだろうね」

つまり今回のタイガーマスクの処分はプロ野球で言うところの、同じ契約解除でも他球団と自由に交渉できる自由契約扱いではなく、所属先が選手を拘束してしまう任意引退に当てはまるのだ。
タイガーマスクはプロレス界から引退するが、もし復帰するのであれば、新日本プロレス以外は認めないということなのだろう。

「当然新日本やテレビ朝日との専属契約が残ってるからね。今すぐ移籍や新団体設立は無理だけど、契約切れを待って動き出すよ、必ず」

師の言うようにタイガーマスクは、本当に戻って来るのだろうか。
真の格闘技者を目指した1人の青年が、リング外の政治的な問題に翻弄され、夢を失ったのは事実なのだ。
プロレスはビジネスである前にスポーツなのだ。
裏切りや反逆はリングの上だけにしてほしい。
今回の問題で、1人の青年と新日本プロレスの将来が大きく変わったことだけは確かだ。


つづく

 2013年6月14日(金)

  『実録・プロレス道 第123話』

最終戦の蔵前国技館で寺西勇迎え撃つタイガーマスクは、第5試合終了後に新日本プロレスフロントの新間寿氏とともにリングに登場。
そして、新間氏から、タイガーマスクは次期シリーズをもってタイガーマスクのリングネームを返上して、新しいマスクマンに変身するために海外へ修行に出ると、会場のファンやマスコミにアナウンスされた。

「やっぱり例の問題は、解決してなかったんだね。次のリングネームも決まってるみたいだしね」

新しいリングネームは、~~・タイガーあるいは、タイガー・~~になるというヒントのもと、ファン対象のクイズも実施された。
タイガーマスクのリングネーム変更が噂された時、フライング・タイガーやスペース・タイガーになるのではないかとも、言われていたことをマサル少年は思い出していたが、とても応募する気分にはなれなかった。

「いずれにしても、タイガーマスクとしては、この寺西戦が最後ってことだね。新日本もあの実力なら、マスクやリングネームが変わっても、人気は落ちないと判断したんだろうね」

タイガーマスクの実力は確かに素晴らしい。
しかし、タイガーマスクという名を捨てても、今と同じ人気を継続出来るのだろうか。
むしろ覆面を脱ぎ捨てて、素顔のレスラーとして再出発をする選択肢はなかったのか。

「噂通り中身が佐山だとしたら、素顔でもいけるとおもうけどね。でも、マスクマンの正体がバレた時のショックは大きいからさ。特にタイガーの人気は異常だから、安易に素顔は公表しないと思うよ」

仮にタイガーマスクの正体が佐山聡だとしら、佐山自身はどう思っているのだろうか。
あの今までにない四次元殺法を生み出し、爆発的な人気を呼んだのもタイガーマスクではなく、佐山というレスラーありきと考えていてもおかしくはない。

「それはあると思うよ。マスクマンゆえのジレンマなんだけど、タイガーぐらい人気が出ると、そのジレンマも計り知れないよ」

佐山は悩んでいるのか、それとも割り切っているのか。
もし、タイガーマスクというキャラクターだけで人気を得れるのであれば、中身は誰であろうが問題はない。
しかしあの、四次元殺法と呼ばれる、誰も真似の出来ない動きは佐山だけのものなのだ。

「ようは佐山がプロレスをどう考えてるかだよ。会社の命令でタイガーを演じているだけなのか、リングに上がれれば姿形には拘らないのか。でも正体が本当に佐山なら、異種格闘技戦もやったぐらいだから、本心は素顔で格闘技色の濃いストロング・スタイルに憧れてるのかな」

佐山はデビューから一年後に、全米プロ空手のマーク・コステロと異種格闘技戦を経験している。
敗れはしたが、決してギブアップしない佐山は、新日本プロレスの象徴であり、異種格闘技戦の先駆者でるアントニオ猪木の魂を、受け継ぐ者としてのプライドだけで闘っていたに違いない。
そんな佐山ならば、これを期に素顔のレスラーへの転身もなくはないと思った。

「佐山のプライドも分かるけど、それよりも師匠の猪木の方が大事なんじゃないのかな。最初にタイガーになったのも、きっと猪木に頼みこまれたからだと思うな」

リング外のゴタゴタで、悩める虎・タイガーマスク。
そして、タイガーマスクとしてのラストファイトは、大熱戦の末オリジナル技のタイガー・スープレックス・ホールドで寺西勇を葬り、虎のマスクに別れを告げたのだった。


つづく

 2013年6月7日(金)

  『実録・プロレス道 第122話』

イガーマスクから初のピン・フォール勝ちを狙う小林邦昭。
6度目となる札幌での一騎討ちは、共闘する寺西勇の再三の乱入でタイガーマスクの反則勝ちに終わった。

「小林は本当に勝つ気があるのかね。タイガーを倒すのは小林かと思ってたけど、続けてピン・フォール負けしたからヤケクソになってんのかな」

マサル少年も打倒・タイガーマスクに一番近いのは、小林だと思っていただけに今回の結末は残念でならなかった。
もし師の言うように、小林がヤケクソになっていたとしたら、もう小林にタイガーマスクを倒すことは出来ないだろう。
もしかすると、小林もそれを感じ取って、盟友である寺西のアシストをしたのだろうか。

「それもあり得るよ、手の内が読まれてる小林よりも、寺西の方が手強いよ。前の試合でもタイガーは苦戦してたからね」

元々は、はぐれ国際軍団の尖兵役として、本来のスタイルをかなぐり捨ててゲリラ戦術も辞さずに闘っていた寺西。
しかし、タイガーマスクのライバルに名乗りを挙げてからは、テクニックとラフファイトを合わせもったベテランの実力者ぶりを発揮している。

「寺西も次こそは勝ちに来ると思うな。試合内容は良かったんだからさ、マスク剥ぎや乱入ばっかりじゃ、ファンは納得しないよ。それよりなにより、寺西自身が嫌になると思うな」

そんな誰もが注目する、タイガーマスクと寺西の再戦は、シリーズ最終戦の蔵前国技館に決定した。
そして、再戦の二週間まえにタッグマッチながら前哨戦が実現した。

「寺西は燃えてるねぇ。タッグだけど、寺西が勝負決めたんだからね。タイガーも押されてたし、今度の蔵前は何かが起きそうだよ」

雪辱に意気上がる寺西は、前回以上にタイガーマスクを攻めこんでいた。
この調子でいくと、寺西は小林以上のタイガーマスクのライバルになってもおかしくはない。
嫉妬や遺恨を引きずる、藤波辰巳と長州力のジュニアヘビー版といったとこか。

「藤波と長州は特殊だからね。寺西はいいんだけど、タイガーの対戦相手を固定するのは、もったいないよ。タイガーは今まで通り、キッドやブラック・タイガー、それに小林と寺西を絡めていくと思うよ」

スーパーヒーローのタイガーマスクには、遺恨を引きずる人間臭さよりも、目の前に立ちはだかる敵を次々に倒して行く方が様になる。
タイガーマスクはレスラーではあるが、今となっては劇画の世界から飛び出した本物のヒーローになってしまったのだ。
時には遺恨試合もあるだろうが、そればかりに拘っていては、ファンに夢を与えるヒーローではなくなってしまうのだ。

「そうだよね。遺恨試合なら、猪木でも藤波でも長州でもいい訳だからさ。やっぱりタイガーは誰が見ても喜ぶ試合をしないとね」

卑怯な手を使う悪役だろうが、正統派のテクニシャンだろうが、空中殺法の使い手のメキシカンだろうが、タイガーマスクはタイガーマスクのやり方で、勝ち続けていかなければならないとマサル少年は考えている。
原作者の問題で一時はその存在自体が危ぶまれたが、やっぱりタイガーマスクはタイガーマスクでなければならない

「そうだよな、マスクやコスチュームを変えても、やっぱりタイガーはタイガーじゃないとな。新日本のフロントもその辺に気付いたんだろうね」

全てが丸くおさまったと思われたタイガーマスク騒動だが、蔵前国技館決戦の当日にとんでもないことがリング上で発表されたのだった。


つづく

 2013年5月31日(金)

  『実録・プロレス道 第121話』

無敵の黄金の虎、タイガーマスクのライバルに急浮上してきた寺西勇。
白熱した名勝負であった大阪でのタイトルマッチの終了後に、事件は起こったのだ。
なんとリングサイドに陣取っていた、虎ハンターこと小林邦昭が乱入し、タイガーマスクのマスクを剥ぎ取ってしまったのだ。

「自分の試合でマスクを破くのは、まあ分かるけどね。他人の試合に乱入して、あんなことをするなんて予想出来ないよな」

小林は一週間後に控えた、札幌での対戦への挑発か。それともただの嫌がらせなのかよく分からないが、好勝負に水をさしたことだけは確かである。

「それよりも、あの時、会場からマスクが投げ込まれたのには驚いたね。ファンがタイガーを助けるために、持っていたマスクをリングに投げたらいよ」

マスクを破かれ素顔をさらす寸前で、ファンに助けられたタイガーマスク。
もしあの赤と金の新デザインのマスクがなかったら、顔を隠しうずくまったまま、攻撃を受け続けていたことだろう。
九死に一生とは、まさにこのことだ。

「あの飛んできたマスクも衝撃的だったけど、あの一件で寺西と小林が手を組んでいるのが分かったね」

小林の乱入により、あわや三つ巴の闘いになると思いきや、寺西は小林と二人がかりでタイガーマスクを攻め立てたのだ。

「小林は長州たちと繋がってる訳だから、寺西は浜口の後を追って革命軍入りするかも知れないよ。いや、間違いなく長州たちと合流するよ」

寺西は数少ない日本人ジュニア戦士として、打倒・タイガーマスクのために小林と同盟を結んだのか。
それとも、戦力ダウンしたはぐれ国際軍団に見切りを付け、革命軍入りするための共闘なのか。
今現在分かっていることは、シングルマッチでもタイガーマスクは、常に小林と寺西の二人を同時に相手にしなければならないということだ。

「一人でも厄介な相手なのに、あの二人を同時に相手にするなんて、今度こそタイガーは危ないね。汚かろうが何だろうが、タイガーが負けるのも、そう遠くないな」

タイガーマスクから初のピン・フォールを奪うのは、小林か寺西か。
しかし、二人がかりの卑怯な手で勝利しても、素直に喜んではいられないだろう。
小林のマスク剥ぎも、寺西の反則ギリギリのラフファイトも、1対1の闘いだから許せた部分もある。
試合中に直接手を出さないにせよ、リング内の二人には、集中して闘って欲しいものだ。

「セコンドといっても、チョロチョロされると気分が悪いよ。せめてタイトルマッチの時ぐらいは、乱入とかはやめて欲しいよな」

何でもありなのがプロレスではあるが、小林と寺西の行動は度を過ぎているのではないか。
格闘技者としてのプライドよりも、勝ちという目先のことだけに拘った姿は、とてもみっともないと思うのだが。

「小林は前の二戦では、わりと正攻法に行ってピン・フォール負けしてるから、やり方を変えてきたっていうか戻してきたのかな。でも、タイガーは小林よりも、寺西の方が不気味に感じてるはずだよ」

危ないかも知れないが、どんなに汚い手を使われようが、次もその次もタイガーマスクは勝つような気がする。
相手が悪ければ悪いほど、勝利した正義のヒーローは光輝くものだから。


つづく

 2013年5月24日(金)

  『実録・プロレス道 第120話』

新日本プロレスの悩みの種の一つである、タイガーマスク問題。
リングネームを変える変えないで揉めていたが、マスクとコスチュームを変更し、リングネームはそのままということで落ち着いたようだ。

「コスチュームはガラッと変わったけど、マスクはそんなにいじってないね。リングネームもそのままだし、無難に決着がついたみたいだね」

メキシコで初披露した新コスチュームで、フィッシュマンとのWWFジュニアヘビー級王座決定戦を制したタイガーマスクにはもう迷いはなさそうだ。
日本に戻っても、いつも通りの四次元殺法を期待できるだろう。

「タイガーはまた二冠王になったことで、更にマークがキツくなるね。小林、キッド、ブラック・タイガーにメキシコ勢だろ、それに寺西まで名乗りを挙げたみたいだよ」

解散目前と噂される、はぐれ国際軍団の寺西勇。
副将格のアニマル浜口が長州力との共闘を理由に軍団を離脱し、目標も戦力も失った軍団の中で、寺西には打倒・タイガーマスク、ジュニア王座戴冠の希望が見えてきた。
しかし、今さらながらベテランの日本人レスラーが、タイガーマスクと互角に勝負できるのか、マサル少年は疑問に感じていた。

「タイガーの今までのライバルの中で、寺西みたいなタイプはいなかったからね。地味かも知れないけど、面白い試合になるんじゃないのかな。マサルが思ってるほど寺西は、一筋縄ではいかないよ」

和製マットの魔術師の異名を持ち、プロレス界屈指のテクニシャンながら、新日本マットではこれといったチャンスがなかった寺西。
タイガーマスクを倒すことは出来なくても、いぶし銀のファイトで苦しめることは考えられる。
しかし、キャラの際立った今までのライバルたちに比べ、師の言うように地味な寺西は玄人好みの試合をするかも知れないが、子供のファンにはウケないのではないのか。

「タイガーが新しいコスチュームにパンタロンを選んだのは、キックとかを今まで以上に意識してるんじゃないの。より格闘技色を強調するなら、寺西みたいなのは絶好の相手だと思うな」

モデルチェンジした黄金の虎とベテランの実力者の対決は、新シリーズ開幕早々に実現した。
NWAジュニア王座を懸けた大阪での闘いは、マサル少年の予想を裏切る大熱戦であった。
惜しくも敗れはしたが、寺西の評価は間違いなく上がったはずだ。

「オレの予想通り良い試合だっただろ。さすが寺西は、テーズやロビンソンに指導を受けただけのことはあるよな。今まで縁の下の力持ち的な寺西に、やっと陽が当たるよ」

国際プロレス時代に培ったテクニックにネチッこいインサイドワークを加えた攻撃は、タイガーマスクが最も嫌う戦法なのだ。
しかも、コーナートップからプランチャを放つなど封印していた空中殺法も飛び出すとは、マサル少年はいささか寺西を甘く見ていた。
この一戦で寺西は、風前の灯のはぐれ国際軍団の中でも、新日本マットに生き残れるきっかけを掴んだようだ。

「これで寺西は、タイガーのライバルの一人として認められたし、次の対戦も期待できるね」

確かに寺西との再戦は楽しみだが、試合後のあの一件だけは、どうも後味が悪くてしかたがなかった。


つづく

 2013年5月17日(金)

  『実録・プロレス道 第119話』

「外人天国、外人天国って何が悪いのかね。いい外人を使ってるんだから、問題ないどころか、面白くて仕方がないけどね」

日本人レスラーを差し置き、外人レスラーにメインを任せる全日本プロレスのシステムに批判的な意見は多い。
しかし、日本人よりも超一流の外人に魅力を感じる師には、全日本プロレスほど素晴らしいプロレス団体はないのだ。

「本当ならアメリカに行かなきゃ観れないカードだって全日本なら観れるんだし、場合によっちゃアメリカでも実現しないカードも全日本なら可能なんだよ」

アメリカでは対抗団体であるNWAとAWAのレスラーも、全日本プロレスマットでは顔を合わせることもある。
全米トップクラスのレスラーの素晴らしさを、日本のファンに観て欲しいと馬場は思っているのだろう。
しかし裏を返せば、外人に頼らなければならないほど、日本陣営に魅力がないと言われても仕方がない。

「いやいや、強豪外人と互角に渡り合えるのは、馬場とかジャンボなんだよ。新日本にブロディとかレイスが出ても、誰も相手に出来ないからね」

確かに新日本プロレスで、アンドレ・ザ・ジャイアントやハルク・ホーガンといった、超一流どころを相手に出来るのはアントニオ猪木ぐらいなものだろう。
そうなると、他の日本人レスラーを活かすには日本人同士の対決しか残されていない。

「藤波や長州がジャイアントとかとやると、どう考えても勝てそうに見えないからね。だから今の新日本は、体格が近い日本人同士の抗争にして正解なんだね」

新日本プロレスも出来ることなら、世界王者クラスの外人をたくさん呼びたかったに違いない。
しかし、それが出来なかったために、猪木自身が日本人対決に活路を見出だしたのだ。

「猪木だってNWAを欲しかったはずなんだよ。だけど無理だから、小林や大木なんかとやったんだよね。その日本人対決の成功が、今の新日本のスタイルに繋がってるんだね」

巌流島の対決と言われ、力道山対木村政彦以来の大物日本人対決と騒がれた、猪木とストロング小林の一騎討ち。
ということは、世界王座獲得を目指した馬場に対し、実力日本一を急いだ猪木もまた力道山の意志を継いでいることになる。

「力道山はまず日本を制してから、世界に目を向けたからね。しかし、今は大物日本人が増えたから、日本統一は難しいよ。だからこそ、猪木はそこに目を付けたのかな」

小林、大木との対決に続き、フリーの日本人レスラーたちを集めて開催されたプレ日本選手権。
猪木が日本統一、日本人レスラーナンバーワンに拘る理由は、やはり馬場の存在が大きいのだろう。

「同期入門だけど馬場と猪木の差はかなり開いてたからね。馬場は早くからメインエベンターで、インター王者にもなって将来を約束されたエースだったからさ。猪木にしてみたらベルト云々よりも、まずは打倒・馬場、つまり猪木の日本人対決の原点は馬場へのライバル心っていうかジェラシーなんだろうね」

袂を分かち時が経ちすぎた今では、もはや実現不可能なBI対決であり日本選手権。
このような状態のなかで、永遠のライバルである馬場と猪木は、今後どのような形で決着をつけるのだろうか。
鶴田、天龍、藤波、長州たちによる代理戦争なのか。それとも、引き抜きなどによる興行戦争なのか。
いくらアルバイトと学業の両立で疲れていても、マサル少年の頭の中からプロレスが消えることはなかった。


つづく

 2013年5月10日(金)

  『実録・プロレス道 第118話』

みのも師の悲しみのカウントダウンが始まった。
師の大好きなテリー・ファンクの引退ツアー、『テリー・ファンクさよらなシリーズ』が全日本プロレスで開幕したのだ。

「とうとう来ちゃったね。テリーがいなくなると、全日本も、いやプロレス自体が寂しくなるよ」

テリーの引退の話になると、師は本当に寂しそうな顔になる。
ブルーザー・ブロディをイチ推しだとばかり思っていたが、テリーは別格なのだろう。

「そりゃブロディも好きだけど、テリーも好きだしジュニアも好きだし、マスカラスもレイスもブリスコも好きなんだよ」

本場アメリカのプロレスに魅了されて、今までプロレスファンを貫いてきた師らしい言葉である。
そんな師が、世界最高峰と言われるNWA世界王者を何度も招聘し、アメリカでも不可能な外人同士の対戦を日本で観れる全日本プロレスのファンなのは頷ける。

「オープン選手権やオープン・タッグ、最強タッグなんかも、馬場じゃなきゃあのメンバーを集められないからね。ファンクスも試合だけじゃなく、ブッキングにも貢献してたんだよ」

馬場が独立するにあたり、外人レスラー招聘窓口として最も頼りにしていたのは、今は亡きドリー・ファンクSr.、そうザ・ファンクスの父親なのだ。
シニア亡き後は、ドリー・ファンクJr.とテリーで引き継いでいる、言わば全日本プロレスの歴史は、ファンク一家を抜きに語れないのだ。

「NWAの役員のシニアが協力してくれたから、豪華な外人を揃えることが出来たんだね。シニアは旗揚げシリーズには、テリーを連れて来日したぐらいだから、よっぽど馬場のことが気に入ってたんだね」

今や日本人対決が注目されているが、当時のプロレス界は日本人と外人の対決が当たり前なのである。
やはり日本におけるプロレスの醍醐味は、日本人が外人レスラーを倒すところにあるのだろう。

「相手が外人の方が、敵対関係が分かりやすいからね。日本人同士がやってても、どっちが悪役なのか分からないじゃん。よっぽどのマニアなら別だけどね」

子供からお年寄りまで楽しめたからこそ、プロレスはメジャースポーツとして定着していたのだ。
野球や相撲でも細かい情報に熟知したマニアはいるが、マニアでなくても楽しめる分かりやすさが人気を呼んでいるのだ。

「藤波と長州がやってても、初めて見る人はどっちが悪役かわからないよ。でも、馬場とブッチャーだと、すぐ分かるからね。まあブッチャーは、もう全日本にはいないけどね」

日本人対悪役外人レスラー、これほど分かりやすいものはない。
しかし馬場は、ファンクス対悪役外人のように、外人同士の対戦をなぜ頻繁に組んだのか。
ファンクスを日本側に引き入れることに、抵抗はなかったのだろうか。

「日本陣営が駒不足で、外人が充実してたから、そうするしかなかったのが本音だよ。デストロイヤーも日本側の助っ人になったし、ヘーシングも全日本に入団って形になってたしね」

しかし外人は外人、良い外人なのか悪い外人なのかは、それこそ見ただけでは分からないのではないか。
いくら馬場とタッグを組むことで日本側の善玉を強調しても、一般のファンでは分かりにくいのではないのか。

「だから全日本の悪役外人は、凶器や反則ばかりだから分かりやすいんだよ。オープン・タッグのファンクス対ブッチャー・シークがいい例だよね。あの試合見ればどっちが悪役かすぐに分かるし、ファンクスを応援したくなるよ」

今でも語り継がれる、ファンクスが優勝を飾った世界オープン・タッグ選手権最終戦。
ブッチャー・シークの凶器攻撃に耐え抜いた、ファンクスの兄弟愛とテキサス魂に誰もが涙したのだ。

「そう、あの試合からファンクスは、完全に日本側になったよね。人気では、馬場とジャンボよりも上になったしね」

凶悪コンビとの死闘で、ファンクスも全日本プロレスも大人気となった。
しかし、そのファンクス人気により、全日本プロレスは外人優遇の体制に、つまり外人天国と揶揄されるようになってしまったのだ。


つづく

 2013年5月3日(金)

  『実録・プロレス道 第117話』

空前のプロレスブームと言われる中で、プロレスブームではなく新日本プロレスブームと言いきる人もいる。
その新日本プロレスブームの立役者であるタイガーマスクに、何やらキナ臭い噂が出回っている。

「タイガーマスクの原作者が逮捕されたんで、リングネームを使うかどうか揉めてるみたいだね」

直接本人には関係ないにしろ、タイガーマスクは子供たちのヒーローだけに警察沙汰というダーティーなイメージは致命的だ。
しかし、タイガーマスクというキャラクターに人気がある訳だから、安易にリングネームを変更するのもどうかと思う。

「確かにあの四次元殺法もタイガーがやるから人気があるんだよね。あの動きとマスクは一体化してるようなもんだから、どっちが欠けてもダメなんだろうな」

四次元殺法を操る素顔のレスラーも、飛べないタイーマスクも何の魅力も感じない。
違う言い方をすれば、タイガーの覆面を被っているのならば、四次元殺法を使いこなさなくてはならないし、四次元殺法を武器にするのであれば、タイガーマスクにならなくてはならないのだ。

「極端だけど、マサルの言いたいことは分かるよ。でも次のシリーズでタイガーは終わりだって発表したからね。秋からは、新しいマスクマンとしてスタートするみたいだよ」

問題が問題だけに簡単に解決するとは思わないが、タイガーマスク自身は納得しているのだろうか。
姿形を変えても、今まで通りのファイトを続けられるのか、ファンの反応はどうなのか、不安は山積みのはずだ。

「せっかくベルトも獲り戻して、これからっていう時にミソが付いた感じだね。しかし、リング外の問題で振り回されるレスラーは可哀想だね」

宿敵である小林邦昭をピン・フォールで破ると同時に、4月に失ったNWAジュニア王者に返り咲いたタイガーマスク。
デビューから2年間で数々のライバルたちを倒し、積み上げてきた伝説は、タイガーマスクを捨てることで消えてしまうのか。
そんなマサル少年の心配をよそに、新日本プロレスはタイガーマスクのリングネーム変更を一時保留にすると発表した。

「今改名するとCMとか商業関連でトラブルが生じるらしいよ。改名発表から1週間ぐらいで、やっぱりやめましたはないよね。もう少し慎重に動けば、こんな大騒ぎにはならなかったのにな」

何かとゴタゴタが絶えない新日本プロレスらしいと言えばそれまでだが、アントニオ猪木が惨敗したIWGP優勝戦を境に、嫌な空気が流れて来ているようだ。
今の新日本プロレスは、猪木とタイガーマスクで支えているようなもの。
その二人にケチが付いたのだから、もしかすると団体を揺るがす何かの前兆なのかもしれない。

「いろいろ仕掛ける新日本だからね、全部話題作りかもね。タイガーにしても、人気を継続させるためには、イメージチェンジは必要だしね。事件は本物だから、それに乗ってタイガーに手を加えたのかもよ」

キャラクター変更や新軍団結成、新外国人の参戦などでプロレスはマンネリ化を防いできている。
しかし、猪木の失神事件や今回のタイガーマスク改名問題は、プロレス的な話題作りの範疇を越えている。
日本のプロレス界を新日本プロレスの独壇場にしたい気持ちは分かるが、あまりやり過ぎると後に痛い目にあうような気がしてならない。
全日本プロレスのようなオーソドックスなスタイルが良いのか、何でもアリの手段を選ばぬ新日本プロレスが良いのか。
師に聞けば必ず、全日本プロレスと答えるに違いないと思うマサル少年だった。


つづく

 2013年4月26日(金)

  『実録・プロレス道 第116話』

三本のヘビー級のベルトが存在する全日本プロレス。
その中で、ジャンボ鶴田の返上によりUN王座が宙に浮いている。
となると次のUN王者候補は、天龍源一郎しか残されていない。

「ジャンボがインター、天龍がUN、序列からするとそうなるね。そうなると、馬場のPWFをどうするかが問題になるね」

インターナショナル・ヘビー級王座は団体のエースが巻き、UN王座はそれに次ぐナンバー2的なイメージは、馬場がインターナショナルを猪木がUNを保持していた日本プロレスから続いている。
しかし、インターナショナル王座が全日本プロレスで復活したが、いまいちエースのベルトには見えない。

「復活してからは、ジュニアとブロディしか巻いてないからね。本当は日本に定着したベルトなんだから、日本人が巻かないと意味がないし価値も曖昧だよ」

せっかく歴史のある偉大なベルトが復活したのに、なぜ馬場と鶴田はインターナショナル王座に執着しないのだろう。
PWF、UNとそれぞれベルトを持っているが、日本の至宝であれば日本人が巻かなければベルトが可哀想だ。

「馬場はジャンボにインターを獲らせたいんだけど、この2年間でインター獲りに専念させなかったのは、ジャンボの実力がそこまで達してないって判断したからじゃないのかな」

それならばなぜ、馬場自身がインターナショナル王座獲りに名乗りを挙げなかったのか。
鶴田が成長するまで、PWFとインターナショナルの二冠王者でも良かったのではないのか。

「馬場がインター王者になって次の王者をジャンボと考えると、どうしても直接対決とか世代交代になるからね。それをやると、新日本と同じになるからさ。馬場は猪木と同じになるのが嫌なんだろうね」

馬場は序列を崩さず、日本人対決を嫌った日本プロレスから続く伝統的なスタイルを貫いている。
団体内での日本人同士の権力争いではなく、世界王座やインターナショナル王座を巻けば誰もが認めるトップレスラーになると馬場は考えているのだろう。
鶴田をインターナショナル王座が復活した時に絡ませなかったのは、下手に挑戦回数を増やすより確実に獲れる時期に挑戦させようとしていたからなのかも知れない。

「何回も挑戦して失敗するとジャンボのイメージが悪くなるからね。それより確実に獲れるまで、ジュニアとブロディでベルトの価値っていうか権威を高くしてたのかな」

馬場自身が新人の頃からエリートコースを歩んで現在の地位を築いただけに、愛弟子の鶴田にも同じ道を進ませようとしているあたりは、泥にまみれることを嫌う馬場らしい。
アントニオ猪木や長州力のような業界のタブーを犯してまで、トップレスラーにはなって欲しくはない。
プロレスの本道を歩み、クリーンなイメージのトップレスラーになって欲しいと願っているのだ。

「因縁や抗争、裏切りばかりがプロレスじゃないからね。ジャンボなら昔みたいに、プロレスをスポーツのトップに戻せるよ」

プロ野球や大相撲と並び、日本の三大メジャースポーツだったプロレス。
それが流血や場外乱闘、不透明決着などで、スポーツというより見せ物的になりつつあるのだ。

「タイガーマスクや長州、藤波、IWGPで新日本の人気は凄いけど、やっぱり昔ながらの本当のプロレスで、全日本は巻き返して欲しいよ」

師の言う本当のプロレスとは、大男たちによるアメリカナイズな洗練されたプロのレスリングなのだ。
そして世界屈指の大男たちに闘いを挑み、真の王者になれる男は鶴田しかいない。
力道山、馬場の伝統を引き継ぐ日本のエースになるために、鶴田にもう失敗は許されない。


つづく

 2013年4月19日(金)

  『実録・プロレス道 第115話』

長州力が新日本プロレスに辞表を提出した同じ日に、テキサス州ダラスにてジャンボ鶴田がUN王座を防衛に成功していた。
そして試合後、インターナショナル・ヘビー級王座奪取に専念するため、UN王座を返上を表明したのだ。

「本当にやっとって感じだよ。去年レイスから獲り返した時が、いいタイミングだったんだけどね」

日頃から鶴田は国内の争いより、世界王座奪取が目的と言い続けていたジャイアント馬場。
しかし、世界王者になるためには、日本の至宝であるインターナショナル・ヘビー級王座戴冠も必要だとも言っていた。
だが2年前にインターナショナル王座が復活してから、復活王者のドリー・ファンクJr.と現王者ブルーザー・ブロディとの間で、タイトルはキャッチボール状態なのだ。

「確かにブロディは強いけど、ジャンボの挑戦の回数が少ないよね。ブロディが来日中に連続挑戦とかさせれば、UN返上もジャンボのヤル気も早まったと思うんだけどね」

自身の代名詞でもある、UN王座を大事に思う気持ちも分かるが、インターナショナル王座が復活した時に鶴田がタイトル戦線に絡まなかったのはとても寂しい。
ドリーとブロディによる外人同士のエース交代抗争よりも、鶴田とブロディが王座を争う方が世代交代も含め良かったのではないか。

「オレもインターが復活した時は、もしかしたら馬場かなって思ったんだよ。でも、馬場は一切挑戦しないだろ、だからジャンボに獲らせるつもりだと思ってたんだけどねぇ」

馬場が過去に巻いたインターナショナル王座に見向きもしないということは、鶴田にエースの座を譲ったと誰もが思う。
しかしそんな周りの期待とは裏腹に、鶴田はインター王座奪取よりもUN王座防衛に力を入れているように見えた。

「本当にジャンボをインター王者にしたかったら、復活した時にUNを返上させてインター以外は挑戦させないようにしとけば良かったんだよ。丸腰になればベルトを欲しいって気持ちも強くなるからね」

日本の至宝であり、日本プロレス界のトップの象徴がインターナショナル王座なのだ。
ヘビー級のベルトが三本存在する全日本プロレスの中で、どれか一つに絞れと言われれば、インターナショナル王座以外はないと思う。
それに、馬場も本音を言えば、自分を力道山の後継者として日本プロレスの絶対的エースにしてくれた、インターナショナル王座のベルトが今でも欲しいはずだ。

「馬場が独立する時に、インターは日プロの物だって言われて、泣く泣く返上したんだよ。本当はインターを持ったまま独立して、新団体の看板にしたかったんだと思うよ」

ならばなぜ、馬場は復活したインターナショナル王座獲りに無関心なのか。
いくらPWF王者とはいえ、愛着もあり日本プロレス界のトップの証であるインターナショナル王座の方が良いのではないのか。

「PWFのベルトは、全日本設立の時に力道山のとこから贈られた物だからね。だから力道山のプロレスを継承してることだから、インターと同等かそれ以上って意識はあるよ。それに、インターが復活してからの対戦相手を考えると、ジュニアの他は若いレスラーばかりで、馬場にしたら格下になるからね」

馬場がNWA世界王座獲りから退いたのも、若いリック・フレアーになった頃だ。
自分のライバルたちが姿を消し、若い世代が頭角を現せば、PWF王座も手離すことになるだろう。
そして、いつか鶴田か天龍が全日本プロレスのエースになった時、三本のベルトの位置付けはどうなるのか。


つづく

 2013年4月12日(金)

  『実録・プロレス道 第114話』

やはり長州力は動き出した。
先日の新日本プロレス離脱会見から約二週間後、正式に辞表を提出したのだ。
今後はフリーという立場で、マサ斎藤やキラー・カーン、そしてはぐれ国際軍団を離れたアニマル浜口などと行動を共にするらしい。

「長州はフリーになっても、新日本に上がり続けるんだろ。本隊に敵対してるから、一応ケジメをつけたみたいだけど、今までとたいして変わらないと思うよ」

フリーのレスラーばかりの革命軍の中で、リーダーの長州が新日本プロレスの所属というのも何だか違和感がある。
今回の辞表提出、フリー転向は、師の言う形だけのものではないと思う。
メンバーと同じ立場になることが、軍団の結束力をより強くすることになる。
それに今後の新日本プロレス本隊との闘いに説得力を持たせるためと、自分自身に甘えを許さない、言わば背水の陣なのだ。

「オレが言いたいのは、どうせフリーになるなら新日本を飛び出して欲しかったんだよ。確かに、これからの長州のファイトは変わるかも知れないけど、もっと分かりやすい変化を期待してたんだよ」

分かりやすい変化となると対戦相手の変化や他団体への殴り込み、つまり革命軍が新日本プロレスから全日本プロレスへ、闘いの場を移すということになる。

「どうせフリーになるなら、このまま新日本の天下を獲るよりも、ジャンボや天龍とガンガンやってもらいたかったな」

打倒藤波を果たした長州の次なるターゲットは、総帥アントニオ猪木の首を獲り、新日本プロレスのトップになることだと誰もが思う。
だが師は、新日本プロレスのエースになるよりも他団体の同世代のレスラーとの対決を望んでいる。
団体の枠を越える対戦は、当然マサル少年も見たくて仕方がない。
しかし、契約問題などで簡単には実現できないでいるのだ。

「新日本かテレ朝との契約が残ってるから、残留したのかもね。もしその辺りがクリアされていれば、間違えなく全日本に行っていたはずだよ」

確かに打倒猪木にも興味はあるが、不可能に近い越境対決の方が面白いに決まっている。
というより猪木にはIWGP奪還という目標があり、長州のことなど眼中にないように見える。

「結局猪木に逃げられたら、長州の革命も意味がないからね。だから今まで誰も出来なかった、越境対決を期待したんだよ。フリーの立場で両団体に上がれたら、それこそ本当の革命だよ」

藤波への宣戦布告に始まり、団体内での反逆、軍団結成やフリー宣言と業界のタブーを犯し続けてきた長州ならば、両団体参戦も可能なのか。
しかしそんな夢のような話が、スンナリ実現するほどプロレス界は甘くはないだろう。

「斎藤やカーンは海外を本拠地にしてるだろ、そこに長州と浜口が加わって、定着してもいいんじゃない。あと海外で新日本と全日本の選手と闘うとかね。日本でのテレビ中継は無理だけど、そういう中立的な団体も面白いと思うよ」

確かに地外法権である海外では、団体を越えたタッグ結成や対戦が実現しているのだから、師の言う海外を拠点とした日本人団体設立も成功の可能性はある。

「日本ではテレビ放映と興行権がネックなんだよ。オールスター戦は東スポ主催で、ノーテレビで利益も平等分配だったからね。仮に新団体が出来ても馬場と猪木が頑張ってる間は日本じゃ難しいよ。まずは海外で始めて様子を見て日本に逆輸入しないと」

やはり日本でやるには、馬場と猪木には逆らえないということなのか。
だとすると、今回の長州のフリー発言も空回りになるおそれがある。
猪木のIWGP獲り失敗や長州騒動などで揺れ動く新日本プロレスとは逆に、全日本プロレスは着実に地固めを進めていた。


つづく

 2013年4月5日(金)

  『実録・プロレス道 第113話』

日本プロレスを除名追放されたアントニオ猪木が、新日本プロレスを旗揚げしたことにより、三団体時代に突入した日本マット界。
だが、インターナショナル・ヘビー級王者ジャイアント馬場を擁する日本プロレスは、他団体を寄せ付けつぬ力があった。

「国際は日本人の人気レスラーがいないし、新日本は外人ルートが弱かったからな。馬場がいて有名な外人が揃う日プロは、人気では一番だったよ」

しかし、その人気独占状態の日本プロレスから、大黒柱である馬場が退団してしまうのだった。
なぜ馬場は退団したのか。馬場は猪木とは違い、入門からエリートコースに乗り、力道山亡き後団体のエースとして順風満帆のレスラー人生ではなかったのか。

「馬場の場合は、日プロの幹部と合わなかったんだよ。原因はテレビ放映のことみたいだけど、だらしない経営に愛想をつかしたのもあるよ」

日本プロレス幹部たちの、乱脈経営を改革する計画だった猪木。
馬場もその計画に一度は賛成したぐらい、日本プロレスの幹部たちは腐りきっていた。
しかしその計画も達成寸前で失敗に終わり、猪木は会社乗っ取り首謀者として永久追放されてしまったのだ。

「日プロの幹部を追い出して、選手会が経営権を握るのが猪木の計画だったみたいだよ。もしその計画が成功してたら、日プロは潰れずに馬場と猪木もまだ一緒だったのかも知れないね」

猪木は追放され、馬場は理想のプロレス団体を設立するために独立、馬場と猪木を失い日本人スター選手のいない日本プロレスの残された道は、崩壊しかなかった。
しかしなぜ馬場は日本プロレスを退団して、猪木と手を組まなかったのだろう。
団体が増えればレスラーもファンも分散し、団体運営もままならないはずだが。

「新日本と合流すればレスラーも揃うし猪木も助かったと思うよ。でも新日本に行ったら猪木の下になるのは明白だからね。それに独立を決心させたのは日テレが放映するってことだからね。馬場は日テレの後押しがなければ、日プロで辛抱してたと思うよ」

プロレスには必要不可欠なテレビ中継であり、放映権料。
長年日本プロレス中継をしていた日本テレビが、放映を打ち切った理由に馬場が関係していた。
日本プロレスは日本テレビとNETの二局で放映し、新規参入のNETは猪木をメインに据え、馬場の試合は放映しない約束であった。
しかし、猪木が退団し目玉選手を失ったNETが馬場の試合を放映したことで、問題が起きてしまった。

「契約違反に怒った日テレが放映を打ち切ったんだよ。そこで馬場に団体を持たせて、プロレス中継を再開したんだね。結局は日テレも馬場も日プロの幹部に見切りをつけたっていうか、利害関係が一致したんだね」

もし日本プロレスの経営がまともで日本人同士の対決が自由であったら、馬場も猪木も退団しないで済んでいたのかも知れない。
常に苦労がついてまわる、団体の社長兼エースにはなってはいなかっただろう。

「外人のブッキングや資金繰りが大変だよね。試合だけに集中して、稼げれば一番なんだけどね」

馬場は鶴田や天龍に、猪木は藤波や長州にそんな苦労をさせぬようにしてきたに違いない。
しかし時代は繰り返すもの、長州も離脱を表明したばかりだ。

「あのクラスになると、独立して勝負したくなるのかな。理由としてお金のこともあるけど、他団体のレスラーと闘ってみたいとか」

ファイトマネーやカード編成、人間関係も退団の理由にはなるものだ。
あの慎重派の馬場ですら、退団してしまうプロレス界だけに、この先も団体は増えるような気がする。

「全日本は大丈夫だと思うよ。やっぱり長州の動きが怪しいよ。新日本の空気っていうか、猪木の世界には野望とか権力争いみたいなのが充満してるからね」

いや、野望を抱いているのは新日本プロレスの選手だけではない。
馬場と猪木が退き、エース争いが本格的になった時、必ず問題が起きるとマサル少年は感じていた。


つづく

 

 

 

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