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 2012年9月28日(金)

  『実録・プロレス道 第87話』

タイガーマスクの負傷欠場により、ダイナマイト・キッドと小林で行われた、NWA世界ジュニアヘビー級王座決定戦。
勝った方が、タイガーマスク不在の新日本ジュニア界の主導権を握ることは間違えないだけに、どちらも負けられない一戦だ。

「二人とも本音を言えば、タイガーからベルトを獲りたかったんだろうけど、チャンピオンとしてタイガーを迎え撃つのも面白いかもね」

タイガーマスクをあと一歩のところまで追い詰めてはいるが、最後の最後で敗れてしまうキッドと小林。
このチャンスをものにして、次回は王者という立場でタイガーマスクと闘うことになれば、展開は変わってくるのだろうか。

「タイトル・マッチはチャンピオンが有利なルールだからね。でもキッドも小林もベルトを守るよりも、タイガーを倒すことに集中するよ。それに、タイガーの挑戦者っていうのは、かなり恐ろしいと思うよ」

タイトルを防衛するには、負けなければ良いのだ。
ピンフォールでなくても、反則でもリングアウトでも負けなければ良い。
時間切れや両者リングアウトの引き分けでも王者の防衛になるのだ。
かたや挑戦者は、何がなんでも勝たなければベルトを巻くことができない。

「だからどうしても、チャンピオンが守り、挑戦者が攻めるっていう試合展開になるんだよ。でも新日本は反則やリングアウトでも、タイトルが移動するんだろ、そうなるとこのメンバーだと分からなくなるけどね」

特に小林は、過去のタイガーマスクとの対戦ではマスク剥ぎによる反則負けばかりである。
例えキッドに勝利し、王者としてタイガーマスクと防衛戦を行ったとしても、反則負けによるタイトル移動も起こりうる。
しかし、暴走ファイトが売りの小林が、王者になった途端に守りの試合をするとは考えにくいし考えたくない。

「小林は結果的に反則負けになってるけど、タイガーと互角に渡り合える実力はあるからなあ。終盤まで落ち着いていれば、完全決着になるはずだよ」

このところ、タイガーマスク以外で王者になったのはブラック・タイガーだけである。
いくら直接タイガーマスクからベルトを奪ってないとはいえ、王者になったことに変わりはない。
今や新日本プロレスのジュニアヘビー級王者は、世界一のレベルと言ってもおかしくはないだけに、キッドも小林も是が非でもベルトを巻きたいことだろう。

「タイガー、キッド、小林、ブラック・タイガーは今のジュニアの四強だよ。その中でキッドと小林が、まだチャンピオンになってないんだから、タイガーに勝つかベルトを獲らないと、ブラック・タイガーより格下に見られるよ」

イガーマスクを軸に繰り広げられていた、ジュニアヘビー級のタイトル争い。
その中でも、タイガーマスクの実力が飛び抜けていただけに、他の実力者同士の対戦は気にも留めていなかった。

「この四人がシリーズで顔を会わすことがなかったから気がつかなったけど、リーグ戦なりトーナメントでぶつけたら、予想がつかないぐらい実力は拮抗してるよ」

ジュニアヘビー級四強の中で、果たして誰が一番強いのか。
皮肉にも、現在最強といわれるタイガーマスク不在の中で、その第一ラウンドが始まるのだ。
そしてその期待された王座決定戦は両者リングアウトに終わり、少なからず予想はしていたが、なんとも残念でならない結果になってしまったのだった。


つづく

 2012年9月21日(金)

  『実録・プロレス道 第86話』

蔵前国技館決戦を控えた新日本プロレスに衝撃が走った。
2日前の後楽園大会で、ダイナマイト・キッドのツームストーン・パイルドライバーでタイガーマスクは首を負傷、蔵前でのタイトル・マッチを欠場、タイトルも返上することになってしまった。

「一番客を呼べるタイガーの欠場は痛いね。ベルトも返上するみたいだし、カードを組み直すのも大変だけど、何よりタイガー見たさにチケットを買ったファンが気の毒だよ」

今の新日本プロレスブームも、元々はタイガーマスクの登場がきっかけでもあるのだ。
あの今までにない、アクロバチックな空中殺法は、老人から子供までも魅力させ、それこそプロレスを見たことのない人たちをも画面に釘付けにしてしまったのだ。

「プロレスを一般層に広めた、タイガーの功績は大きいよ。あれだけの試合はタイガーしか出来ないよ。でも、裏を返すとそれだけ危険が伴うんだよ」

タイガーマスクの試合は、スピーディーかつ激しい内容だ。
それだけに、危険度の高い技も当然出てくるし、対戦相手のレベルが上がれば上がるほど、危険な技の攻防も増えてしまう。
そのたびに、負傷欠場、復活を繰り返すタイガーマスク。
いくら、無敵のスーパーヒーローでも、怪我には勝てない。
しかし、怪我を恐れた消極的な試合では、タイガーマスクはタイガーマスクではなくなってしまうのだ。

「厳しい言い方をすれば、理由はなんであろうと休むのは良くないよ。怪我してでも試合をしろってことじゃなくて、プロレスは怪我をする可能性が高いんだから、怪我をしない体を作るのもレスラーの仕事じゃないのかな」

“無事是名馬”という諺ではないが、名選手であっても試合に出れなければ意味がない。
常に試合に出れるコンディションを維持することも、一流選手の条件であると師は言いたいのだろう。

「タイガーは、カネックやブラック・タイガーの時も怪我で休んでるよね。キッドとやってて、今まで無事だったのが不思議なぐらいだよ」

デビュー戦の相手でもあり、昨年には反則負けとはいえ、タイガーマスクに唯一土をつけた男、ダイナマイト・キッド。
爆弾小僧や剃刀ファイターの異名通り、その容赦なく力強い攻撃でタイガーマスクは何度も危ない目にあっている。
虎伝説の始まりもキッドなら、引導を渡すのもキッドなのだろうか。

「タイガーが復帰してからの、キッド戦が楽しみだよ。でもその前に、蔵前ではキッドと小林がやるんだろ、そうなるとまた複雑になるね」

タイガーマスクをつけ狙うもう一人の刺客、小林邦昭の存在を忘れていたマサル少年。
タイガーマスク欠場により、急遽組まれたキッドと小林による王座決定戦。
実力が近い者同士ゆえに、勝負の行方がまったく読めない。

「タイガーとキッドと小林なら、どの組み合わせもハズレはなさそうだね。タイガーの復帰が21日に間に合えば、どちらかと当たるって訳か」

ジュニアヘビー級実力者の三つ巴の闘い。
実績では上回るタイガーマスクだが、手負いの虎ならキッドと小林にも勝算は充分ある。

「IWGPはジュニアは枠外だけど、タイガーの負傷をきっかけにジュニア戦線も一気に盛り上がるかもよ」

タイガーマスクの負傷欠場により、大戦争に縺れこみそうな新日本ジュニア界。
世界統一のIWGPと、ジュニアヘビー級の新たな勢力争いの二本立てで攻めこむ新日本プロレス。
この先、まだまだ隠し玉がありそうな予感がするマサル少年だった。


つづく

 2012年9月14日(金)

  『実録・プロレス道 第85話』

IWGPというビッグ・イベントを前に、4月3日と21日に蔵前国技館で二度も大会を開く新日本プロレス。
話題になるカードはあるのか、それに加え、IWGPへ向けてのコンディション作りは大丈夫なのだろうか。

「新日本の現状を考えると、革命軍と国際を絡めるしかないよね。あと、タイガーマスクが出れば客は入るから心配ないよ」

大会場には、それに相応しいビッグ・マッチが必要不可欠だ。
しかも、ただ単に有名レスラーによる夢の対決だけでなく、中身の濃い名勝負をしなくてはならない。
格闘技であるプロレスの名勝負なのだから、当然肉体的なダメージは残る。
今まで、ひと月に一度でも多いと言われていた大会場による興行を、二度も行う新日本プロレスの思惑をマサル少年は理解出来なかった。

「IWGPも大事だけど、リーグ戦に参加しない選手だっているからね。藤波、長州、タイガーを放っておく訳にはいかないだろ」

なるほど、確かに猪木人気は凄いし、新日本プロレスは猪木でもっているようでもある。
だからと言って、他の選手をないがしろには出来ないということか。
それに、最近の新日本プロレス人気は、タイガーマスクのお陰でもある。

「ファンにしてみれば、1つでも多くビッグ・マッチを見たい訳だから、そういう意味では新日本はファンのニーズに応えてることになるね」

タイトル・マッチや夢の対決が頻繁に行われれば、ファンとしては言うことがない。
しかし、カードにつられてチケットを買い、会場に行ってはみたものの、凡戦や不透明決着などで、ガッカリしたことも多々ある。
ハッキリ言えば、この蔵前二戦をIWGP前の肩慣らし程度に済まされては困るのだ。
逆に、IWGPに向かって勢いをつけるべく、熱く盛り上がらなければ、団体の評判を落とすだけではないか。

「まあそれは、考え過ぎだな。肩慣らしっていうより、軍団抗争を整理するんじゃないのかな。内輪のゴタゴタを引きずってちゃ、IWGPも世界統一もないだろ」

ここ何年かは、日本人同士の軍団抗争で人気を上げた新日本プロレス。
しかし、長年の夢である世界統一、IWGPを成功させれば、そんなものは色褪せてしまう。

「いい加減猪木は木村と決着をつけて、藤波は長州だろ。タイガーは、また小林かな」

ジュニアヘビー級である、タイガーマスクは別として、IWGP王者になった猪木は、世界中の強豪が首を狙ってくるはずだ。
藤波も長州もトップに立ちたいのならば、猪木を倒さなければならない。
そうなれば、軍団抗争など意味のないものだ。

「長州は本隊に噛み付いて飛び出したから、軍団を続けるのは分かるよ。問題は藤波の立ち位置だね」

同世代のライバル、長州が軍団の頭として猪木に牙を剥いているというのに、藤波はこのまま猪木の下に付いていて良いのか。
今のナンバーツー的なポジションのままでいれば、猪木が退いた後は、自動的にエースの座が転がり込んで来るとでも思っているのだろうか。

「長州が敵にまわった以上、藤波は身動きできないんだろうね。それに、藤波のヒールはどうもピンとこないしね」

なにも長州のように、本隊に敵対しなくても何か方法はありそうなものだが、プロレス流の正攻法では猪木を倒すことは難しい。
真面目一辺倒、正直者の藤波は、このまま猪木を抜くことが出来ずに終わってしまうのか。


つづく

 2012年9月7日(金)

  『実録・プロレス道 第84話』

構想三年、世界中に乱立するタイトルを統一するという壮大な計画IWGP(インターナショナル・レスリング・グランプリ)。
その王者を決める、決勝リーグ戦を5月からスタートさせると発表した新日本プロレス。
福岡で開幕し、最終戦の蔵前国技館まで約一ヶ月のロングサーキットになるらしい。

「当初の予定では世界中をサーキットして、決勝はニューヨークって言ってたけど、やっぱり無理だったみたいだね」

サーキットの件だけではなく、参加外国人レスラーも新日本プロレスの常連ばかりだ。
せっかくの大計画なのだから、NWAやAWAの王者クラスを呼んでもらいたかった。

「現王者を呼ぶのは無理な話だけど、それに近い選手を引き抜くぐらいの意地を見せて欲しかったね」

そもそも、新日本プロレスが全日本プロレスの常連外人アブドーラ・ザ・ブッチャーを引き抜いたのも、IWGPに参戦させるということだった。
しかし、そのブッチャーは決勝リーグ戦はおろか、予選に出場した気配もない。

「ブッチャーは参加すると思ったけどね。新日本に来てからあまりいいところがないから、外されたのかな」

三年もの間、ベルト返上だの予選だのと騒いでみたものの、実際の決勝リーグ戦はどこどこ代表というだけで、毎年開催されているMSGシリーズとたいして変わりはないように見える。

「まあ、それを言っちゃそれまでなんだけどね。確かに、マサルが言うように参加選手に関していえば物足りないよな。ジャイアントとホーガン以外はちょっとね」

申し訳ないが、アンドレ・ザ・ジャイアントとハルク・ホーガン以外の外人選手に優勝はおろか、優勝争いの期待も難しい。
ホーガンにしても、いくら成長著しいとはいえ、まだまだ世界一の器ではないように見える。
やはり、猪木とアンドレの二強で決まりそうだ。

「外人同士の決定戦はまずあり得ないから、猪木とジャイアントが最後まで残るだろうね。まあ猪木のために創られたようなタイトルなんだからさ、猪木が勝たなきゃ意味がないよね」

猪木自身が提唱しスタートさせるのだから、初代王者に相応しいのは猪木しかいないのかも知れない。

「まず間違えなく猪木が勝つよ。あのメンバーで優勝出来なきゃ猪木の価値が下がるよ。ジャイアントにさえ気をつけていれば、すんなり勝ち進めるよ」

本来IWGPとは、世界各国の強豪を集結させ、真の王者を決める大会なのだ。
それなのに、参加選手に物足りなさを感じるのは、やはり日本人対決を中心にしている新日本プロレスの体質からだろう。
外人選手のランクだけを考えると、どうしても全日本プロレスのチャンピオン・カーニバルの方が豪華だ。

「そこが新日本が苦労したとこだよ。スタートまで時間がかかったのも、外人集めが原因じゃないのかな。引き抜きを仕掛けたりしたけど、結局無意味だったね」

超一流の外人選手を参加させるために、仁義なき引き抜きを仕掛けてはみたものの、ジャイアント馬場の逆鱗に触れ惨敗してしまった。

「観客動員数では、まだまだ新日本が上だけどね。外人選手っていうか世界を相手にした場合は、馬場の方が一枚も二枚も上だね」

そんな世界の馬場に勝つために、猪木はIWGP王者にならなくてはならないのだ。
だがその前に、蔵前国技館大会を二つも予定している新日本プロレス。
IWGPを前にして大会場二回とは、かなり厳しいのではないかと思うマサル少年だった。


つづく

 2012年8月31日(金)

  『実録・プロレス道 第83話』

宿敵であるジャイアント馬場との一騎討ちに、やっとの思いでたどり着いた上田馬之助。
先日の天龍戦を考えると、今回の上田には何か期待できるものがあった。
しかし、馬場の腕への集中攻撃をくらい、レフェリーストップ負け、しかも短時間で脱臼までさせられる屈辱的な敗戦だった。

「やっぱり馬場は、日本人同士の抗争に興味がないんだよ。上田とはいい試合をするよりも、ただ勝てばいいって感じの試合だったね」

勝ち負けだけに拘った、観客無視の試合などプロレスではないと、馬場は考えていると思っていただけに意外な結末であった。

「その考えは相手にもよるんじゃないのかな。試合を始めてダメだと思ったら、ダラダラ長く引っ張っても飽きるだけだからね」

では、上田の何が悪かったのだろうか。
日本プロレスが引きずる遺恨を清算する一騎討ちに、ファンは期待していたはずだ。
そんなファン注目の試合であるのに、あっさりしすぎた内容は解せない。

「馬場の実力ならそこそこの時間をもたせられるけど、あの試合で猪木との違いっていうか格の差を見せたかったんだと思うよ。猪木が手こずった、上田を早く片付ければ、間接的に馬場の方が猪木よりも上になるだろ」

その他にも、ビル・ロビンソンや大木金太郎、タイガー・ジェット・シンも馬場は短時間で勝負を決めているし、スタン・ハンセンとも好勝負をしている。
直接闘わずとも、猪木より上、猪木より強いということを世間に知らしめるやり方は、実に馬場らしい。
しかしなぜ、馬場は猪木を避け、猪木は馬場を挑発し、お互い憎しみ合うのだろうか。
日本プロレス史上最強のタッグチーム、BI砲を結成していた同期生であり良きライバルだった二人は、いつの間にか犬猿の仲と呼ばれるようになっていた。

「やっぱり猪木のジェラシーじゃないのかな。同期入門なのに馬場は先にスターになったからね。猪木だって悪くないのに、なんで馬場より下なんだって思い続けてるんだよ」

確かに、現時点で全日本プロレスと新日本プロレスに別れている以上、二人の仲が良好とは思えない。
猪木だけでなく、人間であれば人より上に、特に一番になりたいのは当たり前だろう。

「猪木にしてみたら馬場の実力は認めるけど、ナンバーツーのポジションは我慢ならなかったんだよ。だから、日本プロレス当時から一騎討ちを迫ってたんだよね」

日本プロレス一団体時代では、若手や前座は別として、日本人同士の同門対決は御法度とされていた。
同期の馬場に先を越された猪木だったが、ワールド・リーグ戦優勝やUN王座戴冠によって二人の差はなくなったと思っていたに違いない。

「だけど序列はそう簡単には崩れないよ。当時見てた者としては、馬場の方が遥かに上に見えてたし、実際実力でも上だったからしかたないよ」

会社の方針とはいえ、お前は二番手で馬場の下と言われて黙っていたら、レスラーとして男として終わりだと猪木も思い続けていたはずだ。

「猪木は今でも馬場との一騎討ちを諦めてないよ。馬場に勝たないことには、本当の日本のトップと名乗れないことは、猪木が一番分かってることだからね」

しかし、猪木がどんなに挑発しても動くことのない馬場。
馬場にしてみれば、力道山家もNWAも味方している以上、プロレスの本流は自分のものと思っていることだろう。
いくら猪木が日本選手権だIWGPだと騒いでみても、相手にしないことが馬場的には勝利なのだ。

「そう言えば、いよいよIWGPがスタートするな」


つづく

 2012年8月24日(金)

  『実録・プロレス道 第82話』

ランバージャック・デスマッチというリング内での完全決着ルールは、有利と思われていた天龍源一郎。
しかし、蓋を開けてみればタイガー・ジェット・シンの乱入や凶器攻撃などで、終始試合のペースを握っていたのは上田馬之助のように見えた。

「上田にしてみたら狙いは馬場なんだから、天龍はどうでも良かったんだよ。反則だろうが何だろうが、早く終わらせたかったんだと思うよ」

本命である馬場の首を獲る前に、行く手を阻む天龍を血祭りにした上田。
派手な技こそないが、着実にダメージを与えていく試合運びは、天龍よりも一枚も二枚も上であった。

「天龍は上田をナメてたのかもね。邪魔が入らないリング内だけの勝負だからこそ、ガチンコに強い上田の土俵だったのかな。それで凶器を巧く使うんだから、天龍に勝ち目はなかったな」

試合的には天龍の反則勝ちではあるが、あそこまで好き放題やられたのでは天龍も胸を張って勝ったとは言えない。
反則ばかりのロートルレスラーと見られがちの上田だが、ガチンコに強いところや打たれ強さ、それに加え試合展開を自分のものにするあたりは、さすが日本プロレス出身といったところだろう。
あそまでやられては、打たれ強さや根性に定評のある天龍でも、まだまだ上田には敵わないようだった。

「実力的には若い天龍のほうが上かも知れないけど、今の上田の執念は凄いよ。馬場とやる前に下手な負けは許されないからね、その執念の差だよ」

宿敵である馬場との一騎討ちの前に天龍に倒されてしまっては、ファンやマスコミの注目もなくなってしまう。
いや、何よりも上田自身が納得いかないだろう。
兵隊にやられるようでは、大将と闘う資格などないことぐらい、上田は分かりきっている。

「しかし、上田の執念は凄いけど、今さらって気もするな。馬場に勝ったところで全日本を乗っ取れる訳でもないしね。やっぱり、ケジメなのかな」

師のいう通り、馬場を倒しても全日本プロレスのトップに上田がなることは考えられないし、上田らしくもない。
だとすれば、冷や飯を食わされた恨みを晴らすことと、実力では馬場より上であることを世間に見せつけるだけで終わってしまうではないか。
冷静に考えれば考えるほどこの抗争は、上田の自己満足のための一騎討ちに思えてきた。

「それはそれで正解なんだよ。自己満足が好きで目立ちたがり屋じゃなければ、レスラーじゃないよ。上田もずっと中堅で押さえつけられてたから、ヒールになって目覚めたんだろうね」

派手な大技や華やかなアピールは、トップレスラーかごく一部の人間にだけ許された特権なのだ。
人それぞれタイプというか向き不向きがあるが、持って生まれたもの、努力だけでは変えられないものがあるのだろう。
上田も悪役に転向しなければ、目立たぬ一選手、その他大勢で終わっていたに違いない。

「馬場もこのあたりで、上田と決着つけるんじゃないのかな。ズルズル引きずっても、お互いメリットはないし、ファンも喜ばないよ」

日本プロレスの残党をさっさと片付け、意味のない日本人同士の抗争を終わらせたいのが馬場の本音だろう。
しかし、今回の上田には何か鬼気迫るものを感じるマサル少年だった。


つづく

 2012年8月10日(金)

  『実録・プロレス道 第81話』

天龍源一郎と上田馬之助の一騎討ちは、なんとランバージャック・デスマッチに決定した。
リングの周りをレスラーが取り囲み、場外乱闘やエスケープを阻止することで、リング内での完全決着を目的とする、あのランバージャック・デスマッチなのだ。

「やっぱり天龍は、新日本を意識してるね。いや、新日本っていうより猪木を意識してるのかな」

ランバージャック・デスマッチといえば、アントニオ猪木がここ一番で採用するデスマッチ。
言わば、猪木の十八番的な試合形式なのだ。
そのデスマッチに挑む天龍は、師のいう通り猪木を意識してるとしか思えない。

「完全決着で上田の首を狙う天龍の気持ちは分かるけど、馬場が良く許したよ。馬場は、デスマッチを邪道だと思ってるからね」

確かに観ているファンにしてみれば、リングアウトや反則裁定よりも、完全決着の方が良いに決まっている。
しかし、プロレスは喧嘩や殺し合いではないのだ。
ルールある闘いなのだから、全て完全決着のピンフォールで勝負が決まるとは考え難い。
時として、リングアウトや反則などで終わったとしても、ルール上の作戦でありプロレスらしさでもある。

「デスマッチは見せ物的な要素が強いから、馬場は嫌うのかな。普通のルールでも充分いい試合は出来る訳だし、プロならそこで勝負しろと言いたいのかもよ」

ファンの目を惹き付けるには、デスマッチは最適だろう。
崩壊した国際プロレスも、人気回復のために金網デスマッチやチェーンデスマッチを頻繁にやっていたのを思い出す。

「キチンとしたプロレスでファンを喜ばせれば問題ないけど、それが出来なかったり人気がないとデスマッチに走るのかな」

超人気レスラーが世界王者を相手に内容の濃いプロレスをすれば、誰だって納得する。
しかし、実力はあれど、たいして人気のないレスラーと試合をするならば、知恵を絞らなければファンはソッポを向いてしまうのが現実だ。

「馬場がいる以上、日本のプロレスのトップは馬場だからね。昔からスタイルを変えない馬場のプロレスが日本のプロレスだと思うよ」

力道山の目指したプロレスを継承し、本場アメリカにも認められたのだから、馬場の求めるプロレスこそ正統なのだろう。
その正統に肩を並べ、さらに抜き去るには、正統の逆である邪道しかない。
新日本プロレスが人気団体になったのも、猪木がことごとく馬場の逆を行ったからだろう。

「何でもそうだけど、人と同じことをしてもダメだからね。今までタブーに近いことでも、何でもやって成功したんだから、猪木は凄いよ」

異種格闘技戦や日本人対決、そしてデスマッチ。
邪道と言われながらも、ファンの目を向け認めさせてしまえば、猪木流の正統になってしまうのだ。

「プロレスはこうじゃなきゃいけないってことはないんだから、猪木流のプロレスがあってもおかしくないよ。誰も思いつかないような、予想を裏切るところも猪木の魅力だしね」

普通のファンなら、想像できない空間を繰り出してきた猪木。
天龍も全日本プロレス第三の男から抜け出すために、猪木を意識しだしたのか。そして、上田とのデスマッチは、暴走した上田の反則負けに終わり、ランバージャック・デスマッチの意味がない結末になってしまった。


つづく

 2012年8月3日(金)

  『実録・プロレス道 第80話』

執拗にジャイアント馬場を付け狙う上田馬之助の前に、風雲昇り龍・天龍源一郎が立ちはだかった。

「天龍もここは名前を売るチャンスだからね。すんなり大将の馬場まで行かせないつもりだから、激しい試合になりそうだな」

今では悪役に落ちぶれたと思われているが、力道山の弟子である上田は一筋縄ではいかない気がする。

「日プロで上田は、馬場と猪木とほぼ同期だからね。師匠と同期の大先輩を倒せば、天龍の株が上がるし、自信もつくだろうな。それに日プロ崩壊直前だけど、インター・タッグのチャンピオンにもなってるし、倒しがいがあるよ」

スーパースターのジャイアント馬場とアントニオ猪木の同期でありながら、地味なレスラーだったゆえに中堅に甘んじていた上田。
唯一の勲章は、BI砲退団後に大木金太郎と獲得した、インターナショナル・タッグ王座ぐらいだろう。
一部では強いと噂されているが、いつも反則ばかりでまともな試合をしない上田の本当の実力を、マサル少年は計りかねていた。

「上田はガチンコではかなりの腕らしいけど、馬場も猪木もガチンコは強いよ。そうじゃないとトップにはなれないよ」

プロレスは、表向きの華やかさと、真剣勝負に強い裏の顔を合わせて持たないと一流ではないと、師は言いたいのだろう。
今まででも、強いだけで陽の目を見ないレスラーを山ほど見てきた。
最近注目を浴びている、長州力だってそんな中の一人だったのだ。

「長州もそうだけど、天龍だって不器用だし危なかったと思うよ。馬場やジャンボが天才なら、天龍は努力と根性でのしあがったタイプだね」

目の前にいる、次期エースであり天才レスラーと呼ばれるジャンボ鶴田に、追い付き追い越せとばかりに遮二無二闘い続ける天龍。
だが、長州のように造反したほうが自分を売り出すには、手っ取り早かったのではないか。

「天龍が馬場とジャンボに造反すれば面白いのかもしれないけど、長州の二番煎じになるし、内部の争いは馬場が嫌がるからね。そんなやりにくい中で、あのポジションを掴んだ天龍は良く頑張ってるよ」

本隊に造反することで、自身をアピールした長州に対して、天龍は外敵から馬場や鶴田を守る盾となることこそ、己の使命と感じているのだろう。
それに、天才の馬場と鶴田に対抗出来るものは、角界で培われた根性以外にないと、天龍は信じているはずだ。

「馬場とジャンボに根性がない訳じゃないと思うけど、やっぱり天龍の根性はズバ抜けてるよ。あの根性だけで、観客を唸らすんだから大したもんだよ」

やり方は違えど、プロレス界の頂点を目指す天龍と長州の志は同じなのかも知れない。
天龍にしてみれば、なにも造反しなくてもトップになることを天龍なりに見せつけてやりたいのだろう。

「天龍はいろいろ考えてるよ。猪木の得意技の、延髄斬りや卍固めを使うのも天龍らしいよね。最初はマネだったかも知れないけど、使いこなせば認めてくれるよ。天龍にはもっといろんなものをとり入れて、今までの全日本にいなかったレスラーになってほしいね」

確かに天龍は、全日本プロレスでは異質なレスラーかも知れない。
その異質さを、馬場には認めてもらえないのではないかと感じている中で、天龍と上田の一騎討ちは決定した。
そして、その試合形式を聞いたマサル少年は、自分の耳を疑ったのであった。


つづく

 2012年7月27日(金)

  『実録・プロレス道 第79話』

PWF王座を奪還したジャイアント馬場の帰国を、今か今かと待ち構えている男がいた。
まだら狼の異名をもつ、上田馬之助である。
タイガー・ジェット・シンとのコンビで悪名を轟かせている上田だが、今回は馬場との一騎討ちに狙いを定めているようだ。

「ヒールになった上田の目的は、日本人のトップの馬場と猪木の首なんだよ。馬場と猪木を倒せば、日本人ナンバーワンになる訳だしね。それに、あの二人にはかなり恨みがあるみたいだからね」

馬場と猪木には冷や飯を食わされたから、あの二人だけは絶対に許さないと、ある番組で語っていた上田をマサル少年は良く覚えている。
それは、日本プロレス時代から続くものなのか、それとも上田がフリーになってからなのかよく分からない。

「日プロ当時の上田は地味な中堅選手で、馬場と猪木に比べるとかなり下のランクだったよ。でもそれは、会社の方針なんだし、上田本人だって分かってることだから、恨みを持ったとすればフリーになってからじゃないのかな」

馬場と猪木の相次ぐ退団により、スター選手を失った日本プロレスは一気に崩壊へと突き進む。
猪木は退団というより、会社乗っ取りを企てた首謀者として、追放されてしまったのだ。
その乗っ取り計画を会社首脳陣に、密告したのが上田と噂されている。
もし、恨みをもつならば、上田ではなく、猪木の方なら話しはわかるのだが。

「上田はフリーになって、海外でやってる分には良かったんだろうけど、日本に戻った時の扱いが悪かったのかな。日本人大物ヒールって言われてる割には、格下扱いだったからね」

シンとのコンビでも、チームリーダーはシンであったし、日本人フリーレスラーを集めた狼軍団でも、ボスはヒロ・マツダだった。
タイトルマッチや馬場や猪木とのシングルマッチも、なかなか組んでもらえなかったのだ。
日本プロレスでは地味な中堅レスラー、フリーとなり日本人初の大物ヒールとして弾けるはずが、またしても日陰暮らしを強いられている。

「上田は強いと思うよ。でも、プロレスは強いだけじゃダメってことなんだろうね。アメリカじゃどんなに強くても、客を呼べなきゃ三流以下って言われるぐらいだからね」

確かに、客を呼べるレスラーを一流とするならば、上田には馬場のような外人を凌駕する体格や風格もなければ、猪木のような観客を熱くさせるファイト・スタイルでもない。

「だから、金髪に染めてヒールに変身したんだよ。馬場や猪木と対等に闘うには、昔のままじゃ相手にしてくれないことぐらい、上田自身が一番分かっているはずだからね」

プロレスの基本は、正義対悪の対立概念であることは間違えない。
馬場と猪木が自分の城を守る正義であれば、一匹狼の上田は侵略する悪になるしか同じ土俵に上がる方法はない。

「長州もそうだけど、組織の中にいるとチャンスは回ってこないよ。だから、造反して敵対することで、自分からチャンスを掴みに行けるんだよ」

仮に上田が昔のままのスタイルだったら、馬場も猪木も使わなかっただろう。
いくら日本プロレス時代に同じ釜の飯を食った仲とはいえ、地味なベテランレスラーなど、抱え込む余裕なかどないはずだ。

「上田もプライドが高い男だからね。日プロが全日本に合流した時に、前座扱いが嫌で飛び出したぐらいだからね」

不遇の時代も力道山の弟子、日本プロレスの残党としての意地とプライドで生き抜いて来た上田。
しかし、宿敵馬場との一騎討ちを目前にした上田に、天龍源一郎が待ったをかけたのだった。


つづく

 2012年7月20日(金)

  『実録・プロレス道 第78話』

昨年の借りを返すべく、はぐれ国際軍団とのハンディキャップ・マッチに挑んだアントニオ猪木だが、またしても敗れてしまった。
1対3の変則マッチとはいえ二度続けて負けるとは、猪木ファンはさぞガッカリしたに違いない。

「作戦的には良かったんだけど、最後に残った浜口を甘く見てたね」

前回対戦の時は、はぐれ国際軍団大将のラッシャー木村を残し敗戦してしまったのだ。
そして今回は、大将である木村を早めに仕留めたことから、猪木の勝利は固いと見られていた。
しかし、最後の一人アニマル浜口にフェンスアウトの反則とはいえ、負けてしまったのだ。
連敗した猪木は、またこの変則マッチに挑戦するのだろうか。

「猪木も勝つまでやるとは思えないし、長州たちの方が人気あるから、国際ともそろそろ終わりかな」

一年ちょっと続いたはぐれ国際軍団との抗争も、長州ら革命軍の登場により色褪せてきたように感じる。
1対3の変則ルールではあるが、猪木を倒したはぐれ国際軍団はこの先の目標をなくしてしまったのではないのか。

「新日本本隊と革命軍、国際軍団、外人勢がからんでるから、飽和状態なのかもしれないね。IWGPの前に整理するつもりなのかな」

全世界の乱立するベルトを統一するというIWGP。
その壮大な計画は、猪木の長年の夢であるらしいが、マサル少年は、猪木が本当にやりたいことが理解できなかった。
プロレスを格闘技最強のものにするためにスタートした異種格闘技戦や大物日本人対決など、今までのプロレスにない闘いを開拓してきた猪木には魅力を感じていた。
だが、IWGPを発表した段階で、やっぱり猪木もベルトが欲しいのかと、残念でならなかった。

「そりゃ猪木だってプロレスラーなんだから、ベルトには拘っているよ。ただ、NWAに挑戦できないから格闘技戦や日本人との抗争で凌いできたんだよ」

やはり、プロレスの本道、プロレスの本流はNWA世界王座を目指すことになるのか。
となると、ジャイアント馬場の全日本プロレスの流れが正しいことになる。

「どっちが正しいかはファンが決めることだから、何とも言えないな。でも、力道山から始まった日本のプロレスの理想は馬場が受け継いでいるんじゃないのかな」

確かに全日本プロレスは、対外人や世界王座を争うストーリーで形成されている。
異種格闘技戦や日本人同士の抗争など、馬場の眼中には一切ないのだ。
師匠である力道山の目指したプロレスを着実に続けることが、理想のプロレスと馬場は考えているのだろう。

「猪木も馬場の立場だったら、NWAに拘ってるはずだよ。NWAのベルトを巻くことが世界一って言われてる以上、何をやっても認めてくれないんだからさ。だから、反発する形でIWGPを作ったんだろうね」

しかし、世界中のベルトを統一すると言っているが、全日本プロレスは協力を表明していない。
それでも本当にIWGPは、成功するのだろうか。

「はっきり言うと、世界中のベルトを統一するなんて不可能なんだよ。だから、新日本に協力しているところでやるしかないと思うんだけどね」

海外での新日本プロレスと提携している団体といえは、ニューヨークのWWFとメキシコのUWAが真っ先に思い浮かぶ。

「WWFやUWAを引き入れても、NWAとAWAが賛同しないとスケールが小さく見えるよ。馬場もそのあたりを分かってるから、IWGPには協力もしないし否定的だと思うよ」

そうは言っても、もう後戻りは出来ないIWGP構想。
夢の実現まで秒読み段階となった新日本プロレスを、馬場は冷ややかに見てるようだった。


つづく

 2012年7月13日(金)

  『実録・プロレス道 第77話』

ザ・グレート・カブキ初登場の後楽園ホールは、観客で溢れかえっていた。
そして、カブキが凱旋試合を見事勝利で飾った日に、海の向こうセントルイスでは、ジャイアント馬場がハーリー・レイスからPWF王座を奪還していたのだ。

「敵地でベルトを取り戻すなんて信じられないよ。でも、馬場ぐらいのクラスなら地元でも敵地でも変わらないのかもね」

日本でしかプロレスを見たことがないマサル少年には、プロレスの本拠地や敵地の意味を飲み込めていなかった。

「広いアメリカでは州とか地区ごとで興行を打ってるだろ、それぞれの地区にエースがいて、当然別の地区に行けばヒールになるんだよ。野球だってビジターチームには野次が飛ぶだろ」

なるほど、それであのザ・ファンクスも地元アマリロを出てしまうと悪役になってしまうのか。
では今回のジャイアント馬場も、悪役としてセントルイスに乗り込んだのだろうか。

「いやいや、馬場は別格だよ。無名のレスラーならヒール扱いだけど、世界王者レベルの馬場は招待選手だよ。レイスとかガニアだって日本じゃヒールっぽくないだろ」

確かに、馬場の海外遠征は珍しい。
それに馬場は、団体の長であり日本を代表するレスラーなのだから、アメリカでもVIP待遇なのだろう。

「今回は自分の団体のベルトを取り戻しにアメリカに行ったけど、やっぱり馬場には、NWAの王者として全米をサーキットしてほしかったな」

世界最高峰と呼ばれる、NWA世界ヘビー級王座。
NWAが世界一の団体だとは聞かされているが、NWAそのものが何なのか、マサル少年は今更ながら理解していなかった。

「各地区のプロモーターをまとめているのが、NWAやAWA、WWFなんだよ。団体っていうより連合組織みたいなもんだね。全日本もNWAの加盟団体の一つだよ」

そんなシステムだったのか、てっきりNWAやAWAは団体だと思っていた。
日本に置き換えると、全日本プロレスと新日本プロレスを管理する組織のようなものなのか。

「日本は狭いから団体が二つで充分だけど、アメリカじゃ無理だよね。NWAはチェーン店の本社みたいなもんだよ」

となるとNWAに加盟している全日本プロレスは、NWAの子会社となってしまうのか。
馬場の理想の団体が子会社になってしまうほど、NWAは偉大なものなのだろうか。

「そこまで極端じゃないけど、NWAに加盟しなきゃチャンピオンや大物の外人を呼べないからね。旗揚げ当時の新日本が苦労したのは、NWAに加盟できなかったからだよ」

若い頃に本場アメリカで、NWAの権威を肌で感じた馬場には、NWAこそがプロレス、NWAこそが世界一だと思っているのだろう。
節目節目でNWA王者を招聘していることからも、馬場のNWAに対する思いが伝わってくる。

「アメリカを見習うの間違えじゃないと思うけど、マンネリになる前に次の策を考えないとね。でも新日本ほど展開が早いとついていけないけどね」

本場のアメリカン・スタイルを頑なに貫く全日本プロレスに対し、あらゆる手段を使いファンに目を向けさせる新日本プロレス。
そして、アントニオ猪木は、昨年敗れたはぐれ国際軍団と1対3の決着戦を、再び敢行したのだった。


つづく

 2012年7月6日(金)

  『実録・プロレス道 第76話』

全日本プロレスに、ザ・グレート・カブキが帰って来た。
歌舞伎役者が施す隈取りを顔面にペイントし、入場時のコスチュームも連獅子や忍者風とオリエンタルな脚色が全米で大ヒットしたのだ。

「高千穂もカブキに変身して正解だったね。実力はあるけど、素顔のままだと、あそこまで人気は出なかったと思うよ」

マサル少年はカブキの正体である、高千穂明久というレスラーをよく知らなかった。
日本プロレス在籍時は、UN王座を獲得するなど期待されていたが、日本プロレス崩壊後全日本プロレスに移籍してからは中堅に甘んじているように見える。

「高千穂の本名は米良っていうんだよ。俺と同じ延岡出身でさぁ、それで高千穂なんだよね。それにカブキの親父とうちの親父は地元で相撲やってて知り合いみたいなんだよ」

そうか、師とカブキは同郷だったのか。
師が応援する気持ちはわかるが、いかんせん高千穂というレスラーの印象は薄い。

「高千穂は身体が小さいのと外様だから、全日本ではあまりいい扱いを受けてなかったのかな。でも、アメリカであれだけ成功したのは、やっぱり才能と実力があるからだよ」

身体が大きくなければ、レスラーとして認めないと言われるジャイアント馬場ではあるが、小柄なカブキでもアメリカで大人気となれば、放っておく手はない。
しかし、カブキ人気はペイントやオリエンタルギミックによるもので、アメリカ人にはウケても日本では成功しないのではないかと、マサル少年は考えていた。

「マサルは知らないと思うけど、素顔の時でもアメリカじゃ人気あったんだよ。そりゃ今のカブキほどじゃないけど、ヒールとして一流だったんだよ」

本場アメリカマット界では、よそ者である日本人が成功するには悪役になるしかないという。
馬場でさえデビュー直後のアメリカ武者修行では、悪役として活躍していた。
馬場ほど体格に恵まれない高千穂が、アメリカでスターになるにはやはり実力があったからだろう。

「アメリカは広いから外国人だけじゃなくて、地元以外の州から来ればヒール扱いだよ。ファンクスもアマリロを出るとヒールだからね」

あのスーパーアイドル、ザ・ファンクスでさえも、地元を離れてしまえば悪役になってしまうか。
だとすれば、日本人ならばどんな正統派でも悪役になるのは当たり前だ。
特に戦争によって、反日感情が強い地域であれば、本当に憎まれても仕方がない。

「そんな場所なら、命の危険を感じることだってあったはずだよ。だけど憎まれることがヒールの役目だから、本当に命懸けだよ」

だが、高千穂はなぜ長い間アメリカに行っていたのか、マサ斎藤や上田馬之助のようにフリーとなり海外へ活躍の場を求めるなら分かるが、高千穂は全日本プロレス所属のままなのだ。

「高千穂も斎藤や上田みたいに団体を飛び出して海外に出たかったのかな、でも馬場が許さなかったんだろうな」

日本で中堅としてお茶を濁しているよりも、アメリカへ渡り自分の腕一本で勝負するのも悪くない。
いや、闘う男、レスラーであれば尚更そう思う気持ちは強いのかも知れない。

「多分カブキとして注目されなければ、ずっとアメリカにいたのかもね。もしかすると、今でもアメリカに居たいんだろうな」

プロレスの本場アメリカで大成功した男が、ちっぽけな日本に定着するのだろうか。
序列の厳しい日本に戻っても、馬場と鶴田を抜くことはあり得ないのだから、どう考えてもアメリカの方が良いに決まっている。
マサル少年は、カブキはこのシリーズ限りで、さっさとアメリカに帰ってしまう気がしてならなかったのだった。


つづく

 

 

 

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