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 2011年12月30日(金)

  『実録・プロレス道 第50話』

WWFインターナショナル王者藤波辰巳は、マスクド・スーパースターを相手に初防衛に成功した。

「まあ予想通りだね、次はマードックかカネック辺りだろ。しかし、猪木と木村の試合もあれはないよな」

敗者髪切りマッチで行われたアントニオ猪木とラッシャー木村の一騎討ちは、負けた木村が逃亡してしまい、木村の丸坊主を期待したファンはさぞがっかりしたに違いない。

試合後猪木は三人まとめてかかってこいって叫んでたけど、本当にハンディキャップマッチをやるのかな」

卑怯極まりないはぐれ国際軍団に、業を煮やした猪木は一対三の対決をぶち挙げた。
この抗争もいよいよ佳境を迎えたようだ。

「木村とのシングルが飽きられてるのが分かったんだよ。今回もそうだけど、変わった形式の試合でもしないとお客さんが逃げちゃうからね」

本当に猪木は、はぐれ国際軍団と一対三で闘うのであろうか。
アンドレ・ザ・ジャイアントのような巨人レスラーが、ハンディキャップマッチを闘うのは見たことがあるが、体がそれほど大きくない猪木が口にするからには余程頭に来たんだろう。

「国際との抗争も出尽くしたと思ってたけど、猪木もやるね。猪木なら一対三でも勝てそうに見えるもん。まだまだ、新日本ファンは喜ぶよ」

マサル少年は、今回の髪切りマッチで国際軍団との抗争は一段落し、猪木は藤波とIWGPアジアゾーン代表の座を争うのだとばかり思っていた。

「いや、それはないな。IWGPの新日本代表は猪木以外に考えられないよ。猪木のために創られるのだから、猪木が出なかったらファンは激怒するよ」

確かに、猪木が出なければ話しにならないが、藤波もチャンピオンである以上出場権を懸けて猪木と闘うぐらいの心意気を見せてもらいたい。

「でも藤波はチャンピオンのうちは猪木とはやらないだろうな。ノンタイトルでも負けたらベルトは巻いてられないよ」

それよりも、IWGPの予選はどうなっているのか?
日本での予選もはっきりしていないし、海外の各地区は本当に予選を行っているのか分からない。
北米、南米、中南米、欧州からは、いったい誰が出てくるのだろうか。

「海外でやってるとは聞かないな。日本だって猪木と戸口がやっただけでしょ」

アジアゾーンの予選には誰がエントリーして、どうなれば代表になれるのか発表されていない。
これだけ、IWGPIWGPって騒いでいるのだから、一つのシリーズで予選リーグを開催すれば誰もが納得するはずだ。
新日本プロレスには猪木の他に、坂口征二、藤波辰巳、長州力、木村健吾らのヘビー級が顔を揃えている。
フリーでは、ラッシャー木村、アニマル浜口、タイガー戸口、キラー・カーン、マサ斎藤などが参戦可能なのだから、実現に向けて動き出して欲しい。

「これだけの顔ぶれで総当たりのリーグ戦をやれば間違いなく盛り上がるし、それこそ優勝者はアジア代表に相応しいよ」

結果的に猪木が勝ち上がったとしても、このメンバーを倒したのならば新日本プロレス最強、アジアゾーン代表を名乗っても恥ずかしくはない。
構想から約二年、世界ベルト統一、世界最強の証として創られる王座なのだから、そう簡単にはいかないのは分かる。
しかし、あと二年も三年も待たされてはファンは冷めてしまうだろう。
そんな葛藤の中、一人の男が新日本プロレスのリングに帰って来るのであった。


つづく

 2011年12月23日(金)

  『実録・プロレス道 第49話』

新日本プロレスの藤波辰巳がWWF認定インターナショナルヘビー級王座を奪取したが、何かと物議を醸している。

「WWFにインター王座なんかあったっけ?ジュニア王座の時みたいに藤波用に設けたのかな」

プロレスの殿堂、ニューヨークMSGでジノ・ブリットを破り第二代王者に輝いた藤波。
第二代ということは当然歴史は浅く、師の言う藤波用に作られたと思われても致し方ない。

「IWGPがもたついてるし、藤波のヘビー級転向もパッとしてないからな。ベルトを防衛させてハクをつけるつもりだよ」

藤波は、ガツガツとした野心を剥き出しにするタイプではない。
そんなインパクトに欠ける藤波を売り出すには、王座防衛を積み重ねることが近道なのか。

「IWGPの日本代表は猪木だろうから、藤波の印象が薄くならないためのベルトなんだろうね」

団体トップの猪木が絡まないベルトであれば、存在自体があやふやなベルトになってしまう。
同じインターナショナル王座でも、全日本プロレスのものとは歴史や価値が違い過ぎる。
なによりも、ベルト統一を推進する新日本プロレスの姿勢が矛盾している。

「藤波がチャンピオンになったはいいけど、誰を挑戦させるのかな。ジャイアントやホーガンじゃ負けちゃうし、マードックかスーパースターあたりかな」

なにも団体エースの猪木と闘えとは言わないが、トップ外人のアンドレやホーガンと闘わずにベルトを防衛してもベルトの権威は高くはならない。
それよりも、本当にIWGPは実現するのだろうか。
まさか、実現不可能になったからWWFと新日本プロレスでインターナショナル王座を創設したのか。

「IWGPが潰れることはないと思うけど、燻ってる藤波を何とかしたかったんだろうね」

復帰した猪木は、欠場中日本陣営に付いたホーガンとタッグを結成するなど、話題にはこと欠かない。
ジュニア二冠王者のタイガーマスクも、順調に防衛している。
藤波に必要なのは、ベルトよりライバルではなかろうか。

「プロレスは一人じゃ出来ないからね。だからと言って弱い対戦相手に勝ったってつまんないしな」

勝ち負けが見え見えの試合なんて、面白くもなんともない。
例え勝てそうもない相手でも、何とか引き分けたりリングアウトでもいいから勝ちを拾うのも藤波なら許せる気がする。
ヘビー級の証明として、思い切ってアンドレやホーガンと闘って欲しい。

「どっちが勝つか分からない勝負が一番いいけど。格上相手にガンガン攻めて、あと一歩、次はどうなるって試合も面白いよ。今の藤波はそれをやらなきゃ」

王者として、次期エースとしてのプレッシャーに苦悩する藤波。
周りが思っているほど、藤波が猪木の後継者になる保証はどこにもない。
プロレスは力の世界だ、自分の手で掴み取らなくては意味がないのだ。

「藤波だけじゃなく、猪木も行き詰まってるように見えるけどな。国際軍団との抗争もやり尽くした感じだよ」

マンネリ化を防ぐために、いきなりラッシャー木村と髪切りマッチを発表した猪木。
IWGPまでの繋ぎとはいえ、なりふり構わぬ新日本プロレスに何かが起きるのではないかと思うマサル少年であった。


つづく

 2011年12月16日(金)

  『実録・プロレス道 第48話』

楽しみにしていた師との初観戦、後楽園ホール一階でマサル少年が待っていると師が現れた。
しかし一人ではない、小柄な若い女性を連れている。
師はその女性を軽く紹介すると、ホールへのエレベーターに急いだ。
きっとあの女性は師の彼女なんだろう、師はいつもあの女性と観戦しているのだろうか。
だとすれば、彼女もかなりのプロレス通に違いない。

「彼女は全然プロレス知らなくてさぁ、生観戦すれば好きになると思って連れて来たんだよ」

場外乱闘や凶器攻撃、流血などプロレスには他のスポーツにはないマイナスイメージが付きまとう。
女性のプロレスファンが少ないのは、仕方のないことなのかも知れない。
彼女もこの観戦をきっかけに、プロレスファンになってくれることを師は望んでいるに違いない。
当然師は、選手や試合のルールなど、こと細かく説明してると思いきや、彼女をほったらかしてリング上に集中しているではないか。
マサル少年は心配して彼女の様子を伺ってみると、会場の熱気に驚くというより、明らかにヒイているのが良くわかる。
こんなことではプロレスファンになるどころか、師がフラれるのも時間の問題だと思った。

「いよいよメインだぞ、さすがにこのカードだから超満員だな、立ち見も凄いよ」

まったく彼女をそっちのけで、いい気なもんである。
確かに師の言うように、土曜日の開催も手伝ってか会場はファンで溢れている。
彼女のことなど構ってられないのも分かる気がする。

「結局マサルはどっちサイドだ」

観客は小中学生も多く、ほとんどがテリーファンだろう。
マサル少年は、会場のテリーファンを敵に廻してでもハンセンを応援することにしていた。

「そうか、それじゃ対決だな。テリーはハンセンの師匠だからそう簡単にはやられないよ」

大テリーコールの中、始まった因縁の対決。
終始殴る蹴る攻防が目立つ、まさにテキサスの男同士の荒々しいファイトにマサル少年は興奮していた。

「パンチやキックだけで充分試合になってるから凄いよ。あとは必殺技がどこで出るかだな」

ウエスタン・ラリアットやスピニング・トゥ・ホールドがいつ出るか注目していると、レフェリーが巻き込まれサブレフェリーもハンセンのラリアットで失神してしまったのだ。

「またこれか、ノーコンテストで終わりか。面白い流れだったのにな」

レフェリー不在の無法地帯となったリング上に、ハンセンのセコンドであるロン・バスが乱入。
バスの助けを受けたハンセンがラリアットでテリーを場外へブッ飛ばし、そのままテリーがリングアウトで負けてしまったのだ。
試合後、馬場や鶴田も助けに駆けつけたが、なんとも後味の悪い結果になってしまった。

「期待してたけど、全日本の悪い終わり方がまた出た感じだね」

レフェリー失神、両者リングアウトや反則、ダブルフォールなどの不透明決着がなくなることはないのだろうか。
せっかく初めて観に来た師の彼女も、これでは何が面白いのか分からないだろう。

「新日本と差をつけるためにも、キッチリ勝負を着けて欲しかったな。鶴田や天龍の世代で完全決着主体の試合をやって欲しいよ」

特に今日のようなビッグマッチやタイトルマッチでは、必ず決着をつけてもらいたい。
完全決着こそプロレスファンの、強い願望であり切なる願いだ。
総武線に揺られながら、今日の試合のことやこれからのプロレス界について語り合った。
師たちは呑み行くからと新宿駅で別れた。
改札口へ向かう二人を見送ると、彼女の後ろ姿には「もう、コリゴリ」と書いてあるように見えた。


つづく

 2011年12月9日(金)

  『実録・プロレス道 第47話』

9月11日はテリー・ファンクとスタン・ハンセンの一騎討ちが後楽園ホールで行われる日だ。
チケットはまだ購入していないが、当然マサル少年は観戦予定であった。

「丁度良かった、一緒に観に行くか?」

断る理由などなく、二つ返事で誘いを受けた。
思えば師と知り合ってから約三年、会場での観戦は初めてだ。
しかも、テリーとハンセンの一騎討ちとは、今から興奮してくる。

「よし、じゃあ決まりだな。チケットは俺が用意するから」

師と初めての観戦が話題の一騎討ち、それに加えチケット代まで出してもらえるなんて夢のようだ。

「テリーも来年引退するし、これが日本で最後の大一番だろうな」

マサル少年が子供の頃からの大スターだったテリー・ファンクが来年引退してしまう。
ハンセンも好きだが、テリーも好きだった。
マサル少年は、どちらを応援するか、もうすでに悩んでいた。

「難しいところだよな、どっちも頑張れじゃ観ててつまんないしな」

まったく師の言う通りなのだ、好きな選手を応援して勝てば喜び負ければ悔しい。
それに、両方応援すると言うことは、裏を返せば両方応援していないことになる。
そんな観戦では、面白さが半減してしまう。

「俺はテリーを応援するよ、相手がブロディだったら考えるけど」

やはり師はテリーか、せっかく一緒に観戦するのであれば、同じくテリーを応援するか。
いやいや、もともとハンセンファンなのだから、ハンセンを応援して師と対決しても楽しくなりそうだ。

「そうやって悩むのもプロレスの楽しみ方の一つだよ。マサルの中ではもうゴングが鳴ったようなもんだな」

大会まで時間はたっぷりある、ハンセンかテリーかゆっくり考えることにしよう。
それよりも、マサル少年は高校受験を控えていたのだ。
友人が夏期講習や図書館で猛勉強をしている夏休みに、プロレスに夢中になりすぎているのは分かっていた。
成績は悪くなかったので、普通のレベルの高校なら合格する自信はある。
最悪志望校に入れなかったとしても、今この大プロレスブームの中で、プロレスを観ずに勉強などしていられない。
一生涯プロレスファンであることを誓ったマサル少年は、今この時を楽しみたかった。

「プロレスも大事だけど、高校受験は一生の問題だからな。無責任な言い方かもしれないけど、それこそどっちも頑張れよ」

好きなことだけやっていれば良いほど世の中は甘くはない。
文武両道ではないが、プロレスのために受験勉強もしなければならない。
ハンセンとテリーより、自分自身にどっちも頑張れと言わなければならないとは皮肉なものだ。

「勉強だけが人生じゃないけど、勉強しなくて後悔することだってあるんだよ」

頭の中では分かっていても、なかなか行動に移れない。
まぁ何とかなるだろうという、中学三年生の甘い考えのまま夏休みが終わってしまった。
新学期も始まり、学校でのプロレス人気は落ちていない。
しかし、友人達は塾に通ったり家庭教師と受験勉強しているのだ。
そんな状況を目の当たりにし多少焦りはしたものの、いざプロレスを観てしまうとスッカリ勉強のことなど忘れてしまう。
そんな葛藤の中、マサル少年は9月11日を迎えたのだった。


つづく

 2011年12月2日(金)

  『実録・プロレス道 第46話』

代名詞ともいえるUN王座を失ったジャンボ鶴田。 ダブルフォール引き分けのフレアーとのNWA戦やマスカラスとの流血戦も結果を考えると今一つだったが、今回の防衛失敗は大失態ではないか。

「タイツを黒にして、本格的にエースを目指すと思ったけど、ピリッとしないな」

見慣れた赤と青に星の縫い取りのタイツから、強さを強調する意味で黒のタイツに変身した鶴田。
師の言う通り、変身後の鶴田は精彩を欠く試合ばかりだ。

「フレアー、マスカラス、レイスは確かに一流だけど、エースになるにはファンが納得する試合をしなきゃね。負けるなんて問題外だよ」

ただでさえ話題は、ハンセンとブロディに持って行かれているのに、この大事な時にベルトを獲られるとはエースになるつもりはあるのだろうか。

「馬場とハンセンでPWF、ブロディとジュニアでインターを争ってるけど、鶴田が割って入るとしたらインターだよな」

全日本プロレスにある三本のヘビーのベルト、PWF、UN、インターナショナル。
中でもインターナショナル王座は、力道山から受け継がれる日本プロレス界の至宝。
PWF王座は長年馬場が巻き続け、全日本プロレスの顔のようなもの。
その二本に比べると、UN王座はランクが下に感じる。
鶴田がエースになるには、インターナショナルかPWFを巻きたいところだ。UNに拘っている場合じゃない。

「PWFは馬場が絡むから、鶴田はインターに狙いを付けてるのかな。馬場だって鶴田にインター王者になって欲しいから挑戦しない訳だしさ」

インターナショナル王者になるには、ブロディを倒さなければならない。
というより、全日本マットで猛威を奮う超獣と互角に闘えるのは鶴田以外にはいないだろう。

「UNも獲られたら、この辺でインター獲りに専念してもいいと思うよ」

師の言うように、UN王座に見切りをつけインターナショナル王座に照準を定めれば、近い内に王者になれるだろう。
しかし、格下扱いを受けているUN王座防衛を失敗してからでは、後味が悪過ぎる。

「UNで負けたのにインターを獲れるのかっていうのはあるけど、相手はレイスだし、このまま海外に持って行かれてもいいんじゃないのかな」

インターナショナル王座が復活するまで団体のNo.2的なベルトだったUN王座。
その王座を長らく巻いていた鶴田が、日本プロレス界のトップの象徴インターナショナル王座獲りに出た以上、必要ないのかもしれない。

「天龍がUNを狙うのもいいけど、まずは鶴田がインター王者ならないとね。そうなると馬場のPWFも相手が難しくなるな」

三本のヘビー級ベルトがもたらす障害が出てきた全日本プロレス。
師は、いろんなタイトルマッチを見れるから嬉しいと言っていたが、やはり新日本プロレスのIWGPのように、統一した方が良いのではないか。

「全日本は選手が多いからな、タイプや力量に合わせてベルトに挑戦させてるんだろ。選手が少なくなるか厳選されればベルトを一本にして他は封印するんじゃないのかな」

馬場やジュニア、レイスやニックが衰え、鶴田、天龍、ハンセン、ブロディの時代になれば、全日本プロレスには何本もベルトは必要ない。
きっと今は、将来の全日本プロレスを見据えた予選の真っ最中なのだろう。

「ところでマサル、9月11日は暇か?」

つづく

 2011年11月25日(金)

  『実録・プロレス道 第45話』

NWAインタージュニア王者大仁田厚の首を狙って、敵地日本に乗り込んで来たチャボ・ゲレロ。
炎の稲妻・大仁田厚は、宿敵を返り討ちに出来るのか。

「チャボはシャーロッテで大仁田に負けてるからさ、今度は日本で大仁田に恥をかかせてやるつもりでいるんだよ」

大仁田は順調に防衛を重ねているとはいえ、対戦相手が二流選手ばかりで真の王者と呼ぶにはまだ早い。
超一流のジュニア戦士チャボを倒してこそ、堂々とジュニアのトップを名乗れるというものだ。

「まともにやったらチャボの勝ちだよ。丸め込みとか返し技じゃないと、大仁田に勝ち目はないよ」

チャボは新日本プロレスに参戦している頃、あの藤波辰巳を苦しめた男だ。
地元ロスでは、ヘビー級を相手に好勝負をいくつも演じているヒーローであり、NWA世界ヘビー級王座に挑戦したこともあるプライドの高い男だ。
アメリカでベルトを奪われた屈辱は、忘れてないだろう。

「最近の全日本はヘビーのタイトルマッチの勝敗がうやむやなんだから、ジュニアぐらいはスッキリ決着つけて欲しいな」

もし勝負が着くとしたら、チャボの勝ちだろう。
大仁田が防衛するならば、両者リングアウトドローか、反則勝ちによる防衛が関の山ではないか。
師とは逆にマサル少年は、完全決着はないと読んでいた。

「大仁田は負けてもいいと思うよ。じっくり実力付けてからチャボに再挑戦したって遅くないよ」

長い下積みを経て念願の王者になった割には、貫禄というか凄みに欠ける大仁田。
師の言うようにチャボに負け、どん底から這い上がってくる根性やドラマが見たいが大仁田に余裕はなさそうだ。
そんな期待の一戦はダブルフォール引き分けに終わり、ある意味マサル少年の予想が当たった。

「鶴田とフレアーの時と同じで、両方とも負けてないって言いたいんだろ。でも続けてやられると、ちょっとなぁ」

時間切れ引き分けなら仕方ないが、両者リングアウトやレフェリー暴行による反則などの不透明決着が多い全日本プロレス。
同じ引き分けでも変化を付けたつもりだが、選手権で二度も続けられるとシラケてくる。

「見方によっちゃ大仁田が負けてるように見えるよね。あんな引き分けじゃ大きな顔してベルトは巻けないよ」

チャボがジャーマン・スープレック・ホールドで勝利と思われたが、両者の肩がマットにつき同時にスリーカウントが入ったと言うのだ。
引き分け防衛した大仁田は、裁定を不服とし王座を返上したというより、せざる得ない状況になっていた。

「因縁の対決の一発目があんな結果じゃ、タイガー人気を上回るどころか、全日本の信用に関わるよ」

団体の名誉挽回のため、一日も早く新王者を決めてもらいたいものだ。
大仁田とチャボの決定戦か、複数参加のリーグ戦かトーナメントでもいい、キッチリピンフォールで決めて欲しい。

「ジュニア戦線があれじゃ、やっぱり全日本はヘビーで盛り上げなきゃね」

しかし、師の期待を裏切るかのように、次期エースジャンボ鶴田がUN王座をハーリー・レイスに奪われてしまったのだ。


つづく

 2011年11月18日(金)

  『実録・プロレス道 第44話』

全日本プロレス初のジュニア王者、大仁田厚が話題になっている。
新日本プロレスにタイガーマスクが登場した時ほどの衝撃はないが、ジュニア最強と言われるチャボ・ゲレロを破ってベルトを巻いたのだから、実力はあるのだろう。

「まだ大仁田の実力は何とも言えないな、ライバルがたくさん現れれば面白いんだけどね」

チャボ・ゲレロクラスのレスラーが揃っていれば見応えもあるが、タイガーマスクに比べると対戦相手に不自由しているようだ。

「大仁田を狙って、メキシコからウルトラセブンが来日したね。正体は誰か知ってる?」

全日本プロレスに参戦中のウルトラセブンは、元国際プロレスの高杉正彦が馬場に直接売り込んだレスラーである。
雑誌やテレビでチラッと見ただけなので、正体まではまだ掴めていない。

「あれは高杉だよ」

師は何をバカなことを言っているんだ、高杉は会見の席で馬場とウルトラセブンと一緒に居たではないか。

「会見の時のセブンがダミーなんだよ。正体を隠すために、高杉が連れて来たことにして試合では高杉がセブンになってるんだよ、試合を見てすぐ分かったよ」

なるほど、体型や動きでレスラーの正体などすぐにバレてしまう。
初めから仲介者として顔を出しておけば、疑われないで済むというかバレるまで時間を稼げる訳か。
しかし、覆面を利用して中身が入れ替わるなんて、犬神家の一族のようなトリックを使うとは考えたものだ。
だが、ダミー役のセブンは誰なんだろう。

「そこまでは分からないけど、全日本の若手にやらせてもいい訳だし、かえって無名選手の方が問題ないからね」

そんな凝った演出の割には、パッとしないウルトラセブン。
タイガーマスクの大人気につられて、同じヒーロー物を用意するとは全日本プロレスも安易過ぎやしないか。
それに、同じヒーロー物の覆面レスラーならば、タイガーマスクを越えなければ成功とは言えない。
無敗の二冠王者を簡単に越えられるか。
しかも、そのヒーローは主役ではなく、大仁田のライバルに仕立て上げようとしていることに不安を感じる。

「売りたいのは大仁田なんだから、馬場はセブンのことはあまり考えてないと思うよ」

高杉の実力ならば、大仁田に簡単に負けるとは考えにくい。
なぜ、大仁田の引き立て役のためだけに、高杉はウルトラセブンを引き受けたのか。

「高杉は日本に戻りたかったんじゃないのかな。それよりチャボが来るから、大仁田の真価が問われるよ」

シャーロッテの因縁の再現か…全日本プロレスでは、アメリカでの抗争を日本に持ち込むスタイルを好む。
ベルトの因縁や実力から言って、セブンよりチャボの方が断然興味が湧く。

「大仁田も帰国する前にメキシコに寄ってるんだから、そこでセブンと因縁を作っておけば良かったのに」

大仁田はアメリカでチャボからベルトを獲った後、メキシコでサングレ・チカナに敗れ王座から転落したが、帰国直前に奪回に成功している。
メキシコでの相手がウルトラセブンであれば、全日本マットでアメリカとメキシコを股に掛けた抗争が実現していた。

「三つ巴なら盛り上がると思うけど、今の大仁田とセブンじゃもう少し頑張らないとな」

馬場の期待通りベルトを死守しなければならない大仁田、プライドにかけて返り咲きに燃えるチャボ、日本定着のため簡単には負けられないウルトラセブン。
果たしてこの三人は、ヘビー級ばかり注目される全日本プロレスにおいて、ジュニア旋風を巻き起こすことが出来るのだろうか。


つづく

 2011年11月11日(金)

  『実録・プロレス道 第43話』

師が望んでいた仲間割れが、意外な形で起きてしまった。
ブロディとハンセンの仲間割れではなく、なんとブロディとスヌーカが仲間割れしてしまったのだ。

「やっぱり人気のある組合せを選んだな。ブロディとスヌーカのタッグは好きだったから残念だけど、スヌーカもこれですんなりWWFに定着出来るね」

全日本プロレスでポジションを失ったスヌーカの新天地は、噂通りニューヨークWWFのようだ。
このまま全日本プロレスに残ってブロディとの抗争に突入しても、パートナー不在では長続きはしない気がした。

「これで、ブロディとハンセンのコンビは確定だね。近い内にタッグチャンピオンになって、最強タッグも出場するよ。そして、最終的に仲間割れするんだよ。」

師はまたしても、仲間割れを持ち出した。
確かに、仲間割れでもしない限り、ブロデとハンセンの一騎討ちは実現しない。
この二人の一騎討ちならば、誰もが見たいに決まっている。
しかし、この超獣コンビも魅力的で、タッグとしてどこまでやるかも見続けていたい。

「ブロディがインター王者に返り咲いたし、ハンセンだってPWFを獲りそうな勢いだしね。二人でインタータッグ獲れば今までにない凄いチームだよ」

仮にそれぞれがベルトを巻けば、仲間割れしなくてもダブルタイトルマッチとして一騎討ちもありえる。

「実現したら、一騎討ちの後仲間割れだよ。そして、ブロディはスヌーカと組み直すんだよ」

仲間割れはさておき、師が言うブロディとハンセンの天下になれば、太刀打ちできるのは、馬場かUN王者の鶴田ぐらいのものだろう。
タッグならば、馬場・鶴田組とファンクス以外は、勝ち目はなさそうだ。

「今年は、ブロディ・ハンセン、ファンクス、馬場・鶴田でシングルもタッグもベルトを争うだろうな。まだ先だけど最強タッグも、この三組が優勝候補だよ」

昨年と比べ、ハンセンとスヌーカが代わっただけだが、凄いメンバーになった気がする。
それよりも、日本陣営はどうしたのか。
天龍は、原は何をモタモタしているんだ。

「天龍も原がパートナーじゃキツいよ。鶴田と組むならいい線まで行けるのに」

全日本プロレス第三の男として、売り出し中の風雲昇り龍・天龍源一郎。
いくら売り出し中とはいえ、第三の男つまり馬場、鶴田に次ぐ三番目なのだ。
トップ戦線に混ざりたいのであれば、エースとは言わないが、せめて二番手にならなければならない。

「天龍が鶴田を抜くのは難しいから、馬場が退くの待つしかないのかな。馬場・天龍組より鶴田・天龍組の方が次期エースコンビみたいでいいじゃない」

全日本プロレスも新日本プロレスも、師匠と弟子や先輩と後輩のタッグが多い。
師の考える、次期エースコンビの結成は全日本プロレスの将来のためでもあると思う。

「天龍は今年が我慢のしどころだね。センスがあるんだから、今の内に力を付けておけば、いざ上に行った時に困らないよ」

馬場も天龍の成長しだいで、全日本プロレス代表チームを鶴田と天龍に任せるつもりなのか。
馬場の勇退と天龍の成長はどちらが先か。
そんな贅沢な悩みを抱えるなか、新日本プロレスのタイガーマスクに対抗すべく、NWAインタージュニア王者大仁田厚の凱旋帰国が決定した。


つづく

 2011年11月4日(金)

  『実録・プロレス道 第42話』

遂に合体を果たした、スタン・ハンセンとキングコング・ブルーザー・ブロディ。
この今までにない、強力なタッグチームは゛超獣コンビ゛または゛ミラクルパワーコンビ゛と呼ばれた。

「凄いタッグだけど、主役が二人って感じだよ。名タッグは、サポートに徹する人がいないとバランスが悪いよ」

確かに二人が二人とも、俺が俺がでは収拾がつかないし、お互い目立つことばかり考えていたのでは、話にならない。
チームリーダーは一人で充分なのだ。

「だからブロディには、スヌーカが合ってるんだよ。しかし、スヌーカは浮いちゃったけどどうすんのかな」

前年の世界最強タッグを制し、インターナショナルタッグ王座を含めタッグ戦線を制圧すると思われたブロディ&スヌーカ。
しかし、ハンセンの全日本プロレス移籍、ブロディとのタッグ結成に伴い正パートナーの座を奪われてしまったスヌーカ。
この先、補欠に甘んじるのか、それとも新たな相棒を見つけるのか。

「一番面白いのは、ブロディとハンセンの仲間割れだよ。主役同士のタッグなんて、大抵仲間割れの空中分解だよ。」

遺恨、裏切り、仲間割れは新日本プロレスの定番。
馬場が最も嫌うやり方に思えるのだが。

「いやいや、過去にブッチャーとシークの仲間割れが、あれだけ騒がれ注目されたんだから馬場はやるよ。嫌いなのは、日本人の裏切りだよ」

古くから伝わる日本人対外人の構図を頑なまでに守る全日本プロレス。
馬場には日本人同士の遺恨など興味がないのだろう。
特に全日本プロレスは外人天国だけあって、外人を中心のストーリー展開を得意としている。
師の言うハンセンとブロディの仲間割れは、説得力はかなりある。

「結論を言ってしまうと、ブロディ対ハンセンが早く見たいのと、ブロディ・スヌーカ組がカッコいいから続けて欲しいってことだよ。ハンセンのパートナーは誰でもいいよ」

ブロディ贔屓の師には、ハンセンなどどうでもいいようだ。
仮に仲間割れをしたとしても一騎討ちだけでなく、タッグ対決も視野にいれなければならない。
全日本プロレスに来たばかりのハンセンに、ブロディ以外のパートナーはいるのだろうか。
どうせブロディと別れるならば、同期の鶴田と組むか師匠ファンクスのどちらかと組むのもありだ。

「ハンセンは馬場とも鶴田とも決着がついてないし、日本側に付くにはまだ早いよ。ファンクスとの対決だって見たいだろ」

インターナショナルタッグ王座や年末の世界最強タッグなど、とにかく全日本プロレスでは正規のタッグチームを結成していなければ主流から外れてしまう。
ハンセン、ブロディ、スヌーカ、ファンクス、レイス、それ以外にも豪華外人がこぞって来日してくる。
敵対やタッグ、どの組み合わせが一番しっくりくるのだろうか。
せっかくの一流外人たちを、飼い殺しや持て余すのだけは勘弁して欲しいと願うマサル少年であった。

つづく

 2011年10月28日(金)

  『実録・プロレス道 第41話』

復帰したタイガーマスクを待ち構えていたのは、宿敵ブラック・タイガーだけではなかった。
タイトル挑戦が難しいとされていたNWA世界ジュニア王座、その王者レス・ソントンにタイガーマスクが挑戦するという。
そして、間髪入れず翌日にブラック・タイガーの持つWWFジュニア王座への挑戦が決まった。
手負いの虎に、タイトルマッチの連戦はいささか不利に思える。

「去年もソントンは参戦したけど、NWAの許可がおりなくて藤波は挑戦できなかったんだよな。タイガーマスクにはどうしても獲って欲しいところだろうな」

NWAと名の付くタイトルは、全日本プロレスが独占していた。
一時、新日本プロレスで防衛戦が行われていたNWAインターナショナルジュニア王座でさえも、チャボ・ゲレロの移籍により今では全日本プロレスの管轄になっている。

「今回はインターと違って世界王座だからね。ジュニアと言えどもタイガーが獲ったら快挙だよ。猪木も藤波もできなかったんだから」

負傷欠場あけの心配をよそにタイガーマスクは快勝、世界王者ソントンはもはやタイガーマスクの敵ではなかった。
世界最高峰のベルトを巻くと同時に、返す刀でブラック・タイガーとの闘いに挑んだ。
本当に倒さなければならないのは、暗闇の虎ブラック・タイガーなのだ。
ダブルタイトルマッチにはならなかったが、NWAとWWFの王者同士の対戦は、死闘と呼ぶに相応しかった。

「やっぱりタイガーマスクは天才だよ。最後の技も見たことない凄い技だったな」

ラウンディング・ボディプレスという難易度の高い新必殺技で宿敵にとどめを刺し、虎の仮面の頂上決戦を制した黄金の虎タイガーマスク。
マサル少年は、もうタイガーマスクの実力を疑ってはいない。
偉業を達成した二冠王者を心から祝福している。

「タイガーが復帰してチャンピオンにもなって良かったけど、猪木の復帰はいつ頃になるのかな」

新日本プロレスも手放しで喜んではいられない。
いくらタイガーマスクが活躍しても、シングルマッチでメインに出ることはないからだ。
新日本プロレスのトップ、アントニオ猪木の一日も早い復帰が待たれる。

「ホーガンもいずれアメリカに戻るだろうし、坂口と藤波が悪い訳じゃないけど、やっぱり猪木が出ないとね。」

ホーガンが日本側に付いたとはいえ、あくまでも猪木の代理であることに違いない。
今まで新日本プロレスは、最後は猪木で締め括ってきたのだ。
全日本プロレスとの興行戦争真っ只中のこの大切な時に、団体の顔が居ないのは痛すぎる。

「シングルならホーガンの相手はいるけど、タッグだとパートナーの問題も出てくるね」

シングルであれば、ブッチャー、マードック、アンドレ、スーパースターなどがいるが、タッグマッチを考えると対戦相手よりパートナーを見つけなければならない。

「外人が豊富で、外人対決が定着してる全日本のようにはいかないね」

言い方を変えれば、全日本プロレスは外人に頼っていることになる。
しかし、一貫してスタイルを崩さない馬場・全日本。
そして、史上最強とも思える外人タッグチームが、動きだしたのだ。


つづく

 2011年10月21日(金)

  『実録・プロレス道 第40話』

タイガーマスクとブラック・タイガーの一騎討ちは、両者リングアウトドローだった。
またしても、負けなかったタイガーマスク。
しかし、今度ばかりはかなり攻め込まれ、負けなかったと言うよりは勝てなかったと言った方が正解だ。

「マサル思ってたように、タイガーの楽勝じゃなかったな。ブラック・タイガーが強かったこともあるけど、タイガーも強いよ。無敗はヤラセじゃないよ」

マサル少年の戦前の予想は見事に外れ、タイガーマスクの無敗もブラック・タイガーの実力も本物のような気がしてきた。

「ブラック・タイガーはテクニックもあるけど、ラフにも強いね。もしかすると、タイガーは次は負けるかもよ」

今まで対戦してきた相手とは違い、テクニックとラフファイトを兼ね備えているブラック・タイガーは苦手なのだろう。
しかし、ダイナマイト・キッドも似たタイプだが、タイガーマスクは負けていない。

「キッドはいい線いってたけど、ファイトスタイルが直線的だから、巧く隙を突かれるんだろうな。ブラック・タイガーは、何をしてくるか分からない、いやらしい試合運びをしてるよ」

キッドでも成し得なかった打倒タイガーマスクを、絶妙の反則を織り混ぜる試合巧者のブラック・タイガーなら可能なのだろうか。
良い意味で期待を裏切られたマサル少年は、両者の次の対決を待ちわびている。
そんな虎対決が盛り上がる中、何とタイガーマスクが負傷欠場とベルト返上を発表したのだ。

「カネック戦での怪我を引きずってたのかな。それに、猪木がまた欠場したから無理して出続けたんだろうな」

猪木の穴を埋めるべく、ハルク・ホーガンが日本陣営の助っ人となり、それなりに大会の格好は付いている。
タイガーマスクの抜けたジュニア戦線では、ブラック・タイガーが猛威を振るっていた。
それに加え、タイガーマスクが返上し空位となったWWFジュニア王座まで手に入れたのだから、まさにブラック・タイガーの天下だ。

「新日本のジュニアは手薄だから、早くタイガーに復帰して欲しいね。ブラック・タイガーはいい選手だけど、イメージがダーティーなのが良くないよ」

いくら強い者が勝つ世界とはいえ、国民的ヒーローの正義の味方が王者に相応しい。
誰もが、タイガーマスクの復活を待ち望んでいる。

「マサルはタイガーに負けて欲しいんじゃなかったのか」

今までの無敗は確かに不自然だ。
しかし、ファンのために怪我を隠して出場し続ける勇気や、傷付き倒れベルトを失った悲しさは作られたものではないだろう。
しかも、手放したベルトを当面の敵が巻いているのも皮肉な話だ。
そんな人間臭いタイガーマスクを、いつの間にか応援している自分に気が付いた。

「そうなんだよ、全日本とか新日本とか関係なく、応援したい人を応援して、観たいものを観ればいいんだよ。プロレスにはそれだけの魅力があるんだから、もっと純粋に考えないと」

このところ、変に斜に構えてプロレスを観ていたマサル少年は、師の一言で一気に目が覚めた。
ヘビーもジュニアも日本人も外人も、団体だって関係ない、プロレスはプロレスなんだ。
大人になっても、いや生涯プロレスを応援していこうと、この時マサル少年は心に誓った。
そして、待ちに待ったタイガーマスクの復帰が決まったのだった。


つづく

 2011年10月14日(金)

  『実録・プロレス道 第39話』

昨年4月、新日本プロレスに突如として姿を現したタイガーマスク。
デビュー以来一度もピンフォールを許さずに、一年が過ぎようとしていた。

「相変わらずタイガーマスクの人気は凄いね。プロレスブームじゃなく新日本プロレスブームって言ってるけど、タイガーマスクブームが正解だよ」

無敗の快進撃だけではなく、四次元殺法と呼ばれるアクロバチックな動きが、子供からお年寄りまで喜ばせているのだろう。

「実力もあるし、ライバルにも恵まれてるから、あの人気は本物だよ。」

メキシコやヨーロッパの強豪を次々に撃破し、今年の正月にはデビュー戦からの因縁を持つ、難敵ダイナマイト・キッドを倒しWWFジュニアのベルトも巻いた。
誰が見てもタイガーマスクは、無敵のスーパーヒーローである。
しかし、マサル少年は何か引っ掛かるものがあった。
いくら素晴らしい実力や才能があったとしても、所詮人間であることには違いない。
一度や二度、負けたっておかしくない。

「リングアウトや反則での負けもないよな。対戦相手に助けられてるようにも思えないし、やっぱり天才なんだよ」

師にそう言われても、出来すぎている。
初黒星を噂された、日本人初のルチャ戦士グラン浜田との対決では、リングアウトとはいえ勝利している。
過去に藤波を苦しめた、ヘビー級のカネックとは両者リングアウトの痛み分けだった。
カネックならやってくれると信じていたマサル少年は、上手く逃げられたと思っていた。

「メキシコのトップのカネックには勝てないよ。引き分けだけど負けてないから、無敗は無敗だよ」

何故そんなに無敗に拘るのか、時には負けてその悔しさをバネに努力しても不思議ではない。
勝ち続けているタイガーマスクが、マサル少年にはあまりにも不自然に見えている。

「マサルは中学生の割には、プロレスに詳しくて鋭い感覚を持ってると思ってたけど、まさかタイガーを疑ってるとはね」

確かにタイガーマスクは凄いレスラーだ、でも好きになれない。
次の対戦相手である、ブラック・タイガーにしても子供騙しの急造マスクマンの感が否めない。

「今までに、ブラック・タイガーなんてレスラーはいなかったよ。新しいライバルを分かりやすいようにしたんだよ。」

一般ウケを狙っての、キャラクター作りであり、原作に乗っかったのだろう。
昨年の覆面剥ぎマッチのように、あっさり勝負が着くとマサル少年は予感している。

「ブラック・タイガーって原作では虎の穴の幹部で実力者なんだろ。案外苦戦するかもよ」

デビューから一年で土を付けるのが、同じ虎の仮面の謎のレスラー。
果たして、そんなドラマチックな展開になるのだろうか。

「新日本も焦りだしてきたから、タイガー人気をより確かなものにしたいんだろ。猪木も復帰するし今度の蔵前が正念場だな」

師が言うように、ブラック・タイガーは、タイガーマスクを脅かす男なのか。
それとも、ただの色物レスラーか。
例え、ブラック・タイガーが実力者であっても、どうせタイガーマスクの勝利は固い。
それに、周りが騒ぐほどブラック・タイガーの正体にマサル少年はあまり興味を示さなかった。


つづく

 2011年10月7日(金)

  『実録・プロレス道 第38話』

シングルマッチの本場所、全日本プロレスのチャンピオン・カーニバルと新日本プロレスのMSGシリーズが終了した。
ハンセンとの激闘の勢いのまま馬場は7度目の優勝を飾り、猪木は膝の負傷により優勝戦を棄権した。
リーグ戦三位から繰り上げ進出したキラー・カーンを倒した、アンドレ・ザ・ジャイアントが優勝した。
このシリーズでも両団体の明暗がハッキリ出てしまった。

「今年こそ、鶴田かブロディが優勝すると思ったけど、ハンセンのおかげで馬場は完全復活したな」

ハンセンが不参加だったのが残念だが、馬場の優勝、鶴田、天龍、ブロディの活躍でチャンピオン・カーニバルは大成功だった。

「ジャイアント(アンドレ)が悪い訳じゃないけど、新日本は猪木がメインに出ないと弱いよね。タイガーは人気あるけどジュニアだし、ヘビーを押し退けてメインって訳にもいかないでしょ」

新日本プロレスで、猪木抜きの興行は寂し過ぎる。
次期シリーズ開幕までに復帰を願うのは、ファンだけではなくフロントも同じに違いない。

「全日本の次のシリーズにブロディは残るんだろ。いよいよハンセンとのタッグが見られるな」

全日本プロレスは、チャンピオン・カーニバル終了後グランド・チャンピオン・シリーズと題し、ブロディやデビアスを継続参戦させる。
更に、ハンセン、ファンクス、レイス、スヌーカを投入する力の入れようだ。

「ブロディ、ハンセンとファンクスの対決が楽しみだよ。他の外人同士が当るのも見逃せないね」

馬場の復活や天龍の台頭、鶴田は問題ない。
そこへ来て豪華絢爛な外人勢、次のシリーズも全日本プロレス勝利は固いだろう。

「どう考えても、全日本の方が面白いに決まってるよ。でも、外人に頼り過ぎてるよな」

猪木の欠場の間隙を突いて、全日本プロレスの人気は急上昇しつつある。
しかし、その人気も外人によるものだと、師は心配する。

「馬場が良い外人ばかり呼ぶから、日本人が育たないのかもしれないね。逆に有名外人を呼べない猪木は、外人も日本人も育てるしかなかったんだよ」

確かに、馬場・全日本は海外との強力なパイプから、世界王者を苦もなく招聘し続けている。
かたや猪木・新日本には、それが出来ない。
無名だったシン、ハンセン、ホーガンを猪木の手でスター選手に育て上げたのだ。

「アメリカの一流レスラーを見れるのは嬉しいけど、やっぱり日本人にも頑張って欲しいよ」

そして今、最も注目を浴びているレスラーはタイガーマスク。
彼もまた、新日本プロレスで育て上げられた一人だ。
誰もが認め、猪木不在の新日本マットで孤軍奮闘するタイガーマスクだが、マサル少年の眼差しは冷ややかなものだった。


つづく

 2011年9月30日(金)

  『実録・プロレス道 第37話』

師の言葉だけで、昔のプロレスの素晴らしさが伝わってくる。
一人一人の個性もそうだが、技もそのレスラー特有のものが多い。
馬場の32文ロケット砲、ボボ・ブラジルのココ・バット、フリッツ・フォン・エリックのアイアン・クローなど名前を聞いただけで破壊力の想像がついてしまう。

「エリックの握力は半端じゃないよ。馬場がストマック・クローをかけられてロープに逃げるんだけど、胃袋掴んだまま馬場を持ち上げてリング中央まで戻すんだよ」

リアルタイムでは見ていないエリックの荒技。
強力な握力を活かしたクロー攻撃だけでトップになってしまうなんて考えられない。

「エリックはあとキックぐらいしかなかったしね、大技は最後に一発決ればいいんだよ。最近は序盤から大技を出し過ぎるよね」

いろんな技を見たいと言うのが本音だが、大技を乱発して決らなければ意味がない。

「フィニッシュにまでに、いかにスタミナを消耗させるかっていう、駆け引きが面白いんだよ。いつ出るかいつ出るかってハラハラしながら見てて、必殺技が決まるとスカッとするんだよ」

確かにどんな凄い大技でも、全くダメージのない人間には効かないどころか、かかるはずがない。
ウルトラマンのスペシウム光線や仮面ライダーのライダーキックだって、戦闘開始直後に出したのでは避けられてしまう。
師の言う通り相手を弱らせ、最後に一発決れば立ち上がることはない。

「タイガーマスクだって、よく見てるとあんまり大技出してないよ。技をかけたり受けたりするタイミングが抜群に巧いんだよ」

言われてみれば試合展開はスピーディーだが、大技はここ一番にしか出さない気がする。
ジュニアヘビーでも一流選手の試合の組み立ては同じなのだ。

「全日本もやっとジュニアヘビーに力を入れ出したね。大仁田がアメリカでベルト獲ったから、すぐにでも帰国させて売り出すよ」

全日本プロレス若手三羽烏の一人、大仁田厚が凱旋帰国する。
アメリカでチャボ・ゲレロから、NWAインターナショナルジュニア王座を奪取したのだ。

「馬場は巧いよな、チャボを引き抜いただけじゃなく、結果的にベルトも持って来ちゃうんだからさ」

元はと言えば、新日本プロレスの藤波辰巳や木村健吾が巻いていたNWAインターナショナルジュニア王座。
昨年夏に引き抜いたチャボは、大仁田のライバルにすると同時に、馬場はジュニア王座獲得まで見据えていたのだ。

「大仁田がどれだけやるか分からないけど、ジュニアが充実すれば全日本は磐石だよ。ヘビーと外人は最初から問題ないし」

新日本プロレスのタイガーマスクに対抗し、初のジュニア王者大仁田で勝負を懸ける全日本プロレス。
大仁田はどこまでやれるのか、タイガーマスクを越えられるのか。
この新たな試みにマサル少年は、期待と不安が入り混じっていたのだ。


つづく

 2011年9月23日(金)

  『実録・プロレス道 第36話』

「マサル、やっぱり馬場は凄いだろ」

師はとても満足そうだ。
両者反則に終わった馬場とハンセンの一騎討ちだが、ハンセンを相手に一歩も引かなかったどころか、馬場が攻め勝っていた試合だったからだ。

「新聞にも゛馬場復活!゛って出てたぐらい馬場は完全に甦ったな、あれが本当の馬場の姿だよ」

今までの馬場とはまるで別人のようだった。
ハンセンとの対決で燃えていた馬場に本物のプロレスラーを見た。

「新日本よりお客は入ってたし、馬場はまだまだトップを張れるよ。そうなると、鶴田と天龍の時代はまだ先だな」

大雨にもかかわらず、観客動員数でも一週間前の新日本プロレスをかなり上回り、会場の盛り上がりも含め全日本プロレスの完全勝利だった。
噂では、馬場がハンセンにやられる姿を見に新日本ファンが多数来たらしい。
会場でも、心ない酷いヤジを耳にした。

「そういう客もいたみたいだけど、最後は何も言えなかったはずだよ」

猪木最強、新日本プロレス最強を信じ、馬場の醜態を観に来た新日本ファンの溜飲を下げたはずだ。
やはり日本プロレス界のトップは、今でも馬場であることを確信した。
しかし、日本人の馬場があれだけ凄いのであれば、本場アメリカの王者クラスはとんでもない化け物に違いない。

「ファンクスにしろレイスにしろ、バカにはできないよ。ハンセン、ブロディなんて目じゃないよ」

確かに、年をとってもあれだけの動きを見せるのだから、若い時はハンセンやブロディ以上だったのかもしれない。

「馬場とジュニア(ドリー)の若い時の試合は良かったよ。スピニング・トゥ・ホールドを馬場が蹴りで返そうとするんだけど、ジュニアが手で蹴り足を払いながらスピンし続けるんだよ」

師は興奮を抑えきれず、身振り手振りを交え説明してくれた。
足の長い選手には、決まりにくいと言われたスピニング・トゥ・ホールドだが、さすがにファンク一家の伝家の宝刀だけあって、ちょっとやそっとじゃ破られないのだ。

「昔は決め技が強力だったよ。今は4の字固めやバック・ドロップもつなぎ技になっちゃったけど、昔は決まった瞬間もう終わったと思ったもんだよ」

今でも破壊力抜群の技だと思うが、それを使いこなす選手がいないのだ。
4の字固めはフレアーがフィニッシュにしているが、ルー・テーズを越えるバック・ドロップの使い手は出現していない。

「テーズ流のバック・ドロップは危険だから使わないのかもね。4の字もスピン式と折り畳み式があったよ、入り方の違いだけど。8の字固めもあったよね、4の字の倍効くってことなんだよ」

師のプロレスの古い話は止まらない。
昔の話だが、何故か新鮮に感じてしまう。
そんなマサル少年は、その一言一言を頭に刻み込むように、ただただ聞き続けていた。


つづく

 2011年9月16日(金)

  『実録・プロレス道 第35話』

猪木とブッチャーの一騎討ちは、バッドニュース・アレンの乱入により猪木の反則勝ちで呆気なく終わった。
期待外れというよりも、いつも通りの結果に次こそは完全決着とは思えず、また得意の引っ張りかと思ってしまった。

「ブッチャーとのシングルがあんな感じじゃもう組まれないよ。新日本は日本人対決の方が人気もあるし面白いんじゃないの」

確かに、ブッチャーとの再戦は興味がない。
しかし、ラッシャー木村クラスの大物日本人レスラーは他にいるのだろうか。

「藤波は猪木の弟子みたいなもんだから、ライバルにならないしね。戸口だって去年やったけど、今一つだったもんな、格も全然下だしね」

坂口征二も副社長としてフロント業務が忙しく、主力選手のイメージが薄くなってきた。
今さら坂口が、打倒猪木やトップ争いに参加しても説得力に欠ける。
ならば、団体内の選手に居なければ、また引き抜くのだろうか。
猪木と対等の選手で思い当たるのは、馬場と鶴田の二人しかいない。

「ライバル作りは難しいよ。特に日本人の場合は外人みたいに上手くはいかないよ。ファンだったら若手の頃から知ってるんだからさ、急に強くなったらおかしいじゃない」

期待されていた谷津ですら伸び悩んでいるぐらいだから、前座からの叩き上げではトップになるまで何年かかることやら。

「猪木だって日本プロレスでは馬場の上には行けなかったんだよ。いろいろ問題を起こしたってよりも、実力が違い過ぎただけなんだけどね」

遂に来たか、マサル少年の未知の領域である日本プロレス。
馬場と猪木の若手時代や確執などもっと知りたい。
馬場はエリートコースを歩み期待通りの活躍をしエースになった。
同期の馬場に追い付け追い越せと、根性でトップグループに食い込んだ猪木。
その後、東京プロレス設立や馬場への挑戦状など様々な手段で、プロレス界のトップになろうとまでした。
日本プロレスでは馬場を倒さなければトップではない、逆に馬場がいる限りトップになれないと猪木は苦悩したという。

「マサルは知らないから仕方ないけど、日本プロレスでの馬場と猪木はライバルって感じじゃなかったよ。今の新日本で例えたら、猪木と藤波みたいなもんかな」

当時を知らないから何とも言えないが、猪木と藤波では余りにも差があり過ぎる。
せめて猪木と坂口の関係なのかなと思ったが、藤波クラスとは意外だった。

「そんな時代を知ってるから、馬場の方が断然上って言うのも分かるだろ」

話しだけでは納得できなかったが、ハンセンとの一騎討ちを観た瞬間、師の言う馬場の凄さや素晴らしさを身に染みて感じた。
そして、偉大なる東洋の巨人を知らな過ぎた自分が、とても恥ずかしくなった。

つづく

 2011年9月9日(金)

  『実録・プロレス道 第34話』

遂に全日本プロレスに参戦したスタン・ハンセン。
注目の第一戦は、阿修羅・原をラリアート一発で決める豪快な勝利だった。
こんなことを言っては失礼だが、原の勝利を考えた人などいないだろう。
2分少々で終わった試合からして、早く馬場や鶴田を出せと言わんばかりである。

「2月の東京体育館で馬場とハンセンのシングルが決まったよ」

馬場が自らハンセン退治に向かうとは驚いた。
とはいえ、全日本プロレスのトップでありPWF王者なのだから行くしかないのだ。

「鶴田とハンセンのUN戦でもいいんだけど、大会場のメインだから出し惜しみしなかったんだよ」

ファンやマスコミの間では、゛馬場は何分もつか?゛や゛馬場負けて引退!゛と囁かれている。

「いやいや馬場は勝つよ。最近シンと上田を相手にしてたから、体が鈍ってたんだよ。今回は燃えてるよ」

あのハンセンに、本当に馬場は対抗できるのだろうか。
師から馬場の凄さを聞いたことはあるが、未だそれらしいところは見られない。
しかし、馬場は馬場なのだ、長年日本プロレス界のトップに君臨し続ける超大物なのだ。
ようやく本来の馬場の姿を見れるような気がする。

「全日本は馬場対ハンセン、新日本は猪木対ブッチャー。対戦相手が入れ替わった格好になったけど、全日本の方が新鮮味があるよ。」

10月12月の蔵前と正月の後楽園に続き、今度は東京体育館で熾烈な興行戦争が火花を散らす。
新日本もエース外人を獲られたとはいえ、引き抜きを先に仕掛けた以上負ける訳にはいかない。

「猪木はブッチャーとあまりヤル気ないみたいだから、一回で決着がつくんじゃないの」

衝撃の参戦から半年以上もほったらかされていたアブドーラ・ザ・ブッチャー。
今となっては、猪木との一騎討ちもさほど話題にならない。

「新日本は日本人対決の方が盛り上がるからさ、外人を上手く使えてないよね」

タイガーマスク人気は落ちていないが、猪木も藤波もこのところライバル不足に見える。

「猪木は誰が相手でもそれなりにこなすけど、問題は藤波だよ。外人だって猪木に負けて藤波に負けてじゃやってられないよ」

ヘビー級に転向したはいいが、目標が定まらないどころかヘビーの体になりきっていない。
格下の外人相手でも、見劣りしてしまうぐらい線が細い。
スピードやテクニックも大事だが、エースとして大型外人と闘うには、体を作ることが先決ではないのか。

「藤波はジュニア時代の栄光にすがってちゃ伸びないよ。タイガーが出てから藤波がジュニア王者だったなんて誰も触れないし」

藤波が本気でエースになるつもりならば、ブッチャーやラッシャー木村を倒して猪木に噛みつくぐらいの気迫を見せて欲しい。

「猪木が手こずってる相手を一気に倒せば、そりゃ文句はないよ。でも、そう簡単にいかないのがプロレスの面白いとこだよ。全日本も新日本も今度の東京体育館で今後の方針が見えてくるよ」

両団体の命運を握る東京体育館大会。
どっちに行くか悩むところだが、マサル少年は両方のチケットを当然のように持っていたのだ。

つづく

 2011年9月2日(金)

  『実録・プロレス道 第33話』

新日本プロレス元日決戦のメイン、猪木対ローラン・ボックは猪木の反則勝ちという結果に終わった。
よくある不完全決着だが、セミまでが盛り上がっていただけになんともスッキリしない。

「ボック対猪木も大したことない試合だったな。逃げ回った最後にロープ越しのスリーパーって訳が分からんよ。去年から煽ってるんだから、もう少しましな終わり方がなかったのかな」

あれだけ騒がれたボック戦もイマイチだった、やはり猪木を燃えさせるにはハンセンしかいないのだろうか。

「そう言えば長州がラリアートを出してたね、自分の腕が痛そうだったけど。居なくなったハンセンを意識したのかな」

マサル少年が注目していた、長州力対アニマル浜口は両者リングアウトだったが内容は良かった。
長州の右のラリアートは、上手く決まらず正直カッコ悪るかったが、何か意気込みというかヤル気を感じた。ハンセンを意識しているかは定かでないが、自身の原状を打破したい気持ちの表れにも見えた。

「あの試合じゃ新日本は長州を売る気はないよ。相手が浜口なんだから丸め込みでも何でも勝たせなきゃ。とにかく勝ち続けないと、上には行けないし、ファンの印象にも残らないよ」

確かに、勝たなきゃ始まらない。
良い試合で負けることに比べたら、どんな勝ちでも勝ちは勝ちなのである。
ただし、ピンフォールでなければ意味がないが。

「今年も猪木、藤波、タイガーの序列は崩れないよ。三人に頼りきってないで、誰でもいいから出て来ないと、状況が悪くなるだけだよ」

ヘビー級転向の試練としてスタートした、飛龍十番勝負。
その第一戦がこの日行われたバックランドとのWWFヘビー級選手権試合。
敗れはしたが藤波に寄せる、団体の期待は感じられる。
タイガーマスクは藤波が返上したWWFジュニア王座を戴冠し、ジュニアヘビーのトップとして突っ走るだろう。
差を付けられた長州や木村健吾は冷や飯食いで終わってしまうのか、それともチャンスをものに出来ない彼らが悪いのか。

「長州も木村健吾も何かが足りないんだよ。藤波のライバルって感じじゃないしね、このまま終わっちゃうのかな」

人の良さそうな二人だけに、ヒールなっても成功しそうもない。
やはり陰から支えるのが似合っているのか。

「猪木はさ、自分一人だけ目立てばいいんだよ。スターは二人もいらないってことだよ。ヘビーになったからと言ったって、藤波だって猪木を越えられないし、越えさせないよ」

団体のエースは一人で充分なのは分かる。
複数エースを実践した国際プロレスは失敗したのが良い例だ。
では、全日本プロレスはどうなのか。

「鶴田と天龍が育てば、馬場は身を引くと思うよ。ハンセンも来たし、あとブロディ、鶴田、天龍に任せたいんじゃないのかな」

同世代のこの四人が、火花を散らせば間違いなく面白い。
馬場やファンクスが一線から退いても文句などない。

「とりあえずはハンセンに対する馬場に注目だね」

スタン・ハンセンという強敵を迎え入れたことが、吉とでるか凶とでるのか。
小腹が減り、師直伝の厚切りのハムステーキを食べながら、全日本プロレスの新たな闘いについて、明け方まで語り続けたのだ。


つづく

 

 

 

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