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 2011年8月26日(金)

  『実録・プロレス道 第32話』

まさか元日からプロレスを観れるなんて思ってもみなかった、プロレス人気も頂点に達しているようだ。

「ところでマサルはどの試合に興味があるんだ、やっぱりタイガーか」

タイガーマスクも勿論気になる、それよりも長州力とアニマル浜口の一騎討ちが楽しみだった。

「ずいぶんシブイ好みだねぇ。二人とも体つきが似てるしパワーもあるから、いい勝負になるよ」

アマレス五輪代表から鳴り物入りで新日本プロレスに入団した長州だが、今一つ伸び悩んでいた。
同じミュンヘン五輪に出場した全日本プロレスのジャンボ鶴田に比べると、明らかに格下であった。

「長州は地味だからね、いい技を持ってるんだけど、それだけじゃだめなんだよ」

マサル少年は、そんな長州のオリジナルホールドであるサソリ固めや高角度バックドロップが好きだった。

「あのバックドロップは凄いよ。マサ斎藤もそうだけど、落し方が激しいよね」

長州は体は小さいが、トップに食い込める素質を持っている。
この一戦が、ブレイクするチャンスではないかと感じていた。

「今年も国際軍団との抗争を続けるんなら猪木ばっかりじゃなくて、藤波や長州や木村健吾をぶつけて売り出さなきゃ」

新日本プロレスは、ハンセンという大看板がなくなってしまったのだ、全員一丸とならなければ人気回復は難しい。

「猪木のことだから、意外と何とも思ってないかもよ。タイガーと国際で引っ張るつもりだよ」

確かに、タイガーマスクの人気は高い。
しかし、メインの猪木の相手がラッシャー木村ばかりじゃ飽きてくる。
大物外人との対戦がやっぱり観てみたいのだ。

「ジャイアントとホーガンはWWFの関係で頻繁には来れないでしょ。あとはブッチャーとマードックか、ちょっと弱いね」

あれだけ騒がれたブッチャーもイマイチだ、新日本プロレスは持て余してしるように見える。

「とうとう今月猪木とブッチャーのシングルが組まれたけど、あんまり興味ないな。もっと早ければ良かったけどね」

師の言う通り、いささか旬を過ぎた感じである。
しかし、ブッチャーを上手く使わなければ何のために引き抜いたのか分からなくなってしまう。
しかも、その報復でハンセンを獲られてしまったのだからダブルパンチだ。

「話しばっかりしてたら、試合あんまり観れなかったね。もう一回観ようか」

話しに夢中になり過ぎて、肝心の生中継をいい加減に観てしまった。
当然録画していたので、すぐ観ることにした。
スローやコマ送りを何度も繰り返し、倍以上の時間をかけて試合を見直した。
師の他に来ていたお客さんは、正月番組を楽しみにしていたようだが、プロレスに付き合わされている。
マサル少年は、ちっとも悪いとは思わず朝まで師とプロレスばかり観続けるつもりだった。


つづく

 2011年8月19日(金)

  『実録・プロレス道 第31話』

正月を迎え、我が家に遊びに来た師と最強タッグ優勝戦のビデオを見ながら、徹底検証していた。

「あらためてブロディの凄さが分かったな。スヌーカもよくジュニアのスピニング・トゥ・ホールドを耐えたよ。ギブアップしてもおかしくない決まり方だよ」

テリーが場外失神の後、一人になったドリーはボロボロになりながらも闘い続けが、力尽きていくのが良く分かる。

「ほら今、キン肉マンのゆでたまごさんが映ったよ。ニューヨークヤンキースの服着てる人だよ。ガッツポーズしてるよ」

大のファンクスファンで有名な、ゆでたまご先生はハンセンの乱入をどう思ったのだろうか。
師との話題も、優勝戦よりハンセンのことばかりになってしまう。

「新日本との契約切れを待って乱入したんだよ。全日本参戦はかなり前から決まってたんじゃないかな」

乱入したハンセンを、急遽新春シリーズに参戦させると馬場は発表した。
つまり売られた喧嘩を買うということだが、あまりにも段取りが良過ぎる理由はそういうことからか。

「他と契約が残ってる選手を使って揉めるほど、馬場はバカじゃないよ。蔵前のああいう登場の方がインパクトあるからね。実際俺も興奮したし」

殴り込みからの参戦の方が確かに興味をそそる。
なかなか考えたものだ。
一方、エース外人ハンセンを引き抜かれた新日本プロレスは、かなりのダメージを受けたに違いない。

「ブッチャーから始まった引き抜き合戦だけど、仕掛けた新日本より馬場の方が上手だったね。新日本は完全に油断してたね」

全く師の言う通りだ、あれだけ引き抜きが盛んに行われていたいたのに、エースのハンセンを獲られるなんて大失態だ。

「ハンセンはタイプ的に全日本に合わないと思ったのかな、ブッチャーを獲ったってハンセンを持って行かれりゃ世話ないよ」

新日本プロレスが引き抜いた選手をまとめても、ハンセン一人の方が価値がある。
この引き抜き合戦はまだ終わってはいないが、全日本プロレスが有利に進んでいるように思える。

「馬場の顔の広さや信用の勝ちといったところかな。新日本もジャイアントやホーガンを獲られないように気を付けないとね。馬場を怒らすと怖いことが分かったはずだよ」

眠れる獅子ジャイアント馬場の実力を持ってすれば、ハンセン獲得など朝飯前のことなのだろう。
ハンセンの全日本プロレス移籍により、ブロディとのタッグや鶴田との同期生対決など夢が膨らむ。
蔵前乱入の一件で、師匠ファンクスとの因縁も出来てしまった。

「これで人気は必ず逆転するよ。あの状況からして、馬場だって逃げる訳にはいかないよ、ハンセンとやるしかないだろ」

全日本プロレスの総帥として、馬場もハンセンとの対決は避けては通れない。
しかし、年齢からくる体力の衰えなど心配が馬場には付きまとう。

「マサルは馬場の凄さを知らないからな。年をとってもここ一番のパワーは今でも日本一だよ」

そう言われても、馬場の凄さをまだ見たことのないマサル少年には実感が湧かない。
あのハンセンのスピードとパワーに、本当に付いていけるのかどうか疑問だ。
間もなく生放送される新日本プロレス元日決戦をよそに、全日本プロレスの今後のことばかり気になる二人だった。


つづく

 2011年8月12日(金)

  『実録・プロレス道 第30話』

新日本プロレスのMSGタッグリーグ戦は、師の予想通りアンドレ・ザ・ジャイアント&レネ・グレイ組が優勝を飾った。
同点二位のハンセン・マードック組を破り決勝に臨んだ猪木・藤波組。
猪木がアンドレにボディスラムを決めて見せたが、一日二試合はキツかったのか、ジャイアント・プレスで藤波がスリーカウントを聞いてしまった。
その三日後、蔵前国技館では全日本プロレス世界最強タッグ決定リーグ戦の優勝戦が行われていた。
放送までは約一週間ある、結果だけなら明日の東京スポーツで知ることが出来る。
もっと早く知りたければ、今夜東京スポーツ社に電話して聞くことも可能だ。
マサル少年は、電話でその日の結果を聞いたことが何度もある。
しかし、試合結果を誰よりも早く知ることが出来ても、会場での生観戦には勝てない。
師は今頃楽しんでいることだろう、やっぱり無理をしてでも蔵前に行きたかった。
そんな気持ちを紛らわすために、プロレスのビデオばかりを見ていた。
我が家には一台しかないテレビを占領していたため、妹は怒っていたが構わず見続けていた。
そろそろ決まる頃だな、ブロディ組の優勝かなと思った時、電話が鳴った!

「ハンセンが蔵前に来たぞ!」

声で師だとすぐに分かった。
よほど興奮しているのか、師は自分の名前も告げずに叫んでいる。
しかしなぜ、ハンセンなんだ?
全日本プロレスを観に行っているはずなのにおかしい。

「ブロディのセコンドにハンセンが付いたんだよ!場外でテリーにラリアートを出してさ、大変なことになったんだよ!」

試合終了後すぐの電話、師の慌てぶり、ただ事ではないことは良く分かる。
しかし、何故ハンセンはセコンドに付き乱入までしたのか。
ハンセンとブロディが仲が良いことは有名で、若い頃、アメリカでタッグチャンピオンになったこともある間柄だ。
それよりも、新日本プロレスとの契約はどうなっているのか。
引き抜き合戦の関係で、契約内容だって厳しいはずなのに。
一瞬の間に、マサル少年の頭の中は様々なことが駆け巡り、軽いパニック状態になっている。

「馬場も鶴田も飛び込んで来て、ハンセンも流血して、とにかく凄い騒ぎだったんだよ」

馬場までもが乱闘に加わるなんて珍しい、やはりハンセンの無法乱入なのか。
しかも、団体を跨いでの乱入など前代未聞、馬場が最も嫌うやり方だ。

「こんな大事件マサルに一番に知らせなきゃいけないと思ってさ、あと優勝はブロディ組だよ、スヌーカもカッコ良かったよ」

ハンセン…ブロディ…テリー…ラリアート…馬場…鶴田…流血………
電話では状況が上手く飲み込めない。
頭の中も整理が出来ていない。
またしても、行かなくて失敗してしまったことだけは確かだ。
とにかく明日の東京スポーツで確認しなくては始まらない。

「今度会った時に詳しいことを話すよ」

師のおかげで優勝チームを知る手間が省けたが、ハンセンの行動が気になって仕方がない。
この日だけの乱入なのか、それとも全日本プロレスに闘いの場を移すのか。
明日の東京スポーツ、土曜日の全日本プロレス中継が待ちきれない。
それよりも、師に会うの方が待ちきれないマサル少年だった。


つづく

 2011年8月5日(金)

  『実録・プロレス道 第29話』

新日本プロレスのMSGタッグリーグ戦も、師の予想通りの展開で進んでいる。
どうやら今年は、アンドレ・グレイ組かハンセン・マードック組の優勝で決まりそうだ。
猪木・藤波組にもギリギリチャンスは残されてはいるが、運良く決勝に進めても優勝は無理のような気がする。

「それにしても、新日本の蔵前は凄かったらしいね。放送は決勝のあとみたいだけど、早く見たいよ」

全日本プロレス贔屓の師が絶賛するだけのことはあった、新日本プロレス蔵前大会。
大阪での決勝戦前に開催したにも関わらず、超満員札止めの大成功だった。

「ボックはそのまま年越して元日の後楽園にも出るんだろ。猪木とのシングルは見てみたいよ」

蔵前ではタッグで猪木と対戦したローラン・ボック。
極力猪木との絡みを避けたのちに、藤波を殺人スープレックス一発で仕留めて見せた。
猪木との決着は元日までお預けになってしまったのだ。
ヘビー級に転向した藤波は、ハンセンにバックドロップを決めてはみたが、まだまだ大型外人に通用するところまではいかない。

「正月は遊び行かせてもらうから、新日本の生放送は一緒に見れるな。あとビデオ見せてくれよな」

正月2日と3日の後楽園ホール大会を毎年恒例としている全日本プロレスに対して、新日本プロレスは元日に持ってきたのだ。

「またしても先手を打たれたな。新日本は大会場並みのカードを揃えたしね」

顔見せ興行的な全日本プロレスとは違い、選手権試合と選手権クラスのシングルをぶつけてきた新日本プロレス。

「ボック、バックランド、キッド、それにゴッチまで出るんだろ。ハンセンは出ないのかな」

言われてみれば、ハンセンの出場は発表されていない。
一年中日本にいるから、正月ぐらいはアメリカに住む家族のもとへ帰るのだろう。

「最強タッグの決勝に行くことになったよ。ブロディ組とファンクスがやるんだよ。このままいくとメインで勝った方が優勝だな」

全日本プロレスの世界最強タッグ決定リーグ戦の優勝争いは、馬場・鶴田組、ザ・ファンクス、ブロディ・スヌーカ組の三強に意外にもシン・上田組が迫ってきていた。
リーグ戦最終日は、この四組の直接対決だ。
何とか仕事が片付いたのか、それとも蔵前観戦を優先したのか定かでないが、とにかく嬉しそうだ。

「最強タッグの決勝で一年を締め括れるなんて最高だね。優勝はファンクスでもブロディでもどっちでもいいよ」

そんなこと言いながらも、ブロディ組に勝って欲しいに決まっている。
考えてみたら、師とはまだ一緒に行ったことがない。来年には是非とも実現させたいものだ。

「テレビだけじゃなくて、たまには会場で一緒に観たいよな。観るなら後楽園がベストだよ。どこからでも観やすいし」

いつも一人での観戦ばかりなので、もし師と行けるのであれば最高だろう。
来年もプロレスブームは間違えなく続く、スケジュールを調整して出来るだけ多く会場に行きたい。師との約束も楽しみだ。
しかし、そんな夢を見るマサル少年には、来年高校受験という最悪のイベントが待ち構えているのだった。


つづく

 2011年7月29日(金)

  『実録・プロレス道 第28話』

全日本プロレスでは、インターナショナル王座を巡る闘いが過熱していた。

「ブロディが負けちゃったけど、きっとまた獲り返すよ。それと、馬場に一回ぐらいは挑戦して欲しいな」

全日本プロレスの総帥である馬場はインターナショナル王座に興味がないのか。それとも、自身の保持するPWF王座だけで満足しているのだろうか。
フレアーのNWA世界王座にも挑戦しなかったし、このところ、一歩退いた感じに見える。

「NWA王者がレイスならともかく、明らかに格下のフレアーには挑戦したくないんだよ。」

なるほど、トップレスラーとしてのプライドがそうさせているのか。
しかし、ドリー・ファンク・ジュニアがインターナショナル王者ならば挑戦しても良さそうなものだが。

「将来的には、鶴田にインターを巻いて欲しいんだよ。プロレス界のトップになる意味でさ」

力道山から続く日本プロレス界の至宝を巻くことがエースの条件。
馬場は鶴田がインターナショナル王者になった時が、全日本プロレスのエース交代の時だと考えているのだろう。

「鶴田は欲がないっていうか、変に賢いんだよ。NO.2のポジションが楽なことを良く分かってるんだろうな」

何も鶴田がシャカリキにならなくても、今の全日本プロレスは盛り上がりを見せている。
鶴田の実力を持ってすれば、焦らずともベルトという結果は後から付いてくる。
しかし、馬場にはそんな姿が歯がゆいに違いない。
一日も早く全日本プロレスの、いや日本マット界を代表するエースになって欲しいと願っていることだろう。

「まぁ、しばらくはあの二人に任せておけば大丈夫だよ」

ドリーとブロディによる、インターナショナル選手権試合が続いている。
全日本プロレスでは珍しく遺恨を引きずっている形だ。
最強タッグまで引っ張るのだろうか。
連覇を狙う馬場と鶴田の師弟コンビ、ザ・ファンクス、そしてブロディとスヌーカが優勝候補三強だ。

「全日本の最強タッグは歴史もあるし、ハズレはないよ。特に今年はブロディが出るからね」

インターナショナル王座を獲られてしまったが、ブロディ組が優勝候補筆頭であることには間違えない。
というより、当然優勝だと師は言わんばかりである。

「ブロディが良いのは当然だけど、パートナーのスヌーカもカッコいいんだよ」

新日本プロレスの話しをした時と打って変わって、師の目の色が明らかに違う。

「体は大きくないけどスピードもテクニックもジャンプ力もあるし、決めのポーズもカッコいいんだよな」

そういえば師は、吉田拓郎に憧れてカーリーヘアにしたと聞いたことがある。
ブロディ、スヌーカ、吉田拓郎、師はよっぽどカーリーヘアが好きなのかも知れない。

「マサルは最強タッグ観にいかないのか?」

10月の蔵前二連戦に行く条件として、年内は行かない約束を母親としてしまったのだ。

「それは残念だな、俺は仕事の都合がついたら行くつもりだよ。」

本音を言えば仕事よりも最強タッグ決勝のほうが大事なのだろう。行く気満々に見える。
そんな浮かれきっている師には、もう正月が来ているようだった。


つづく

 2011年7月22日(金)

  『実録・プロレス道 第27話』

アントニオ猪木とラッシャー木村の再戦は、予想通り猪木が勝った。
しかし、勝つには勝ったが、ピンフォール勝ちではない。

「完全決着じゃなかったし、またやる理由が出来たね」

レフェリーストップによる木村の負けだが、木村自身は負けを認めていないのだ。
遺恨試合は、まだまだ続けられるだろう。
そんな中、藤波辰巳はWWFジュニアヘビー級王座を返上し、ヘビー級転向を表明した。
ジュニアはタイガーマスクに任せるということだ。
引き抜きや興行戦争、そして団体崩壊など様々な動きがあった今年のプロレス界も、気が付けば両団体ともタッグリーグ戦を残すのみになっていた。

「新日本はかなり組合せを変えてきたね。去年の優勝チームも出てないしね」

昨年バックランドと組み優勝した猪木は、愛弟子藤波との師弟コンビで出場。ホーガンが不参加のため、ハンセンは移籍してきたばかりのマードックと、"テキサス・ロングホーンズ"を結成した。

「猪木もパートナーが藤波じゃキツいね、ヘビーに転向したからエース教育かも知れないけどさ。ハンセン組かジャイアント組の優勝じゃないのかな。サモアンズやアレンじゃ優勝は無理だしね」

確かに日本勢の優勝は難しい、しかし外人組同士の決勝戦だと全日本プロレス的になってしまう。
タイトルがない今の新日本プロレスは、元国際勢との抗争がメインなだけに、タッグリーグ戦で外人を目立たせる作戦なのかも知れない。

「でも猪木組は決勝には残るよ。新日本ファンは猪木を見たい訳だし、猪木だって残りたいだろ」

猪木とタイガーマスクさえ出場していれば、新日本プロレスは問題ない。
現に4月6月8月10月11月に蔵前国技館を超満員にしているのだから。

「タッグ決勝の前にも蔵前があるんだろ、凄いね新日本は、勢いがあるというか余裕があるというか」

大阪での決勝戦の前に、蔵前で特別興行を敢行する新日本プロレス。
タッグ公式戦はなく、スペシャルマッチをズラリと揃えた大会は、蔵前が決勝戦の全日本プロレスに対する嫌がらせなのか。

「絶対嫌がらせだろうな、ボックが出るから東京のファンにも見せるって名目はあるけどさ」

猪木も負けた欧州の帝王、墓掘り人ローラン・ボックを投入し、明らかに全日本プロレスの邪魔をしてるように見える。

「あのメンバーで特別試合を組むんだから、そりゃ面白いよ」

ボックはハンセンとタッグを組み猪木、藤波と当たる。その他、タイガーマスクはカネックとアンドレはカーンと一騎討ち、ローデスとマードックのアウトローズ復活など、決勝戦はなくても東京のファンは納得する夢のカードばかりだ。

「それより全日本の最強タッグは出場チームきまったの?ブロディは出るよな」

師は新日本プロレスの話題ばかりで飽きたかのように、全日本プロレスの話に切り換えた。
よっぽど新日本プロレスが嫌いなのか、全日本プロレスが大好きなのか、はっきり言ってしまえば両方なのだった。


つづく

 2011年7月15日(金)

  『実録・プロレス道 第26話』

マサル少年の願いが通じたのか、新日本プロレスと全日本プロレスの、旗揚げ10周年記念大会は予想を上回る盛り上りだった。
しかし、何だかスッキリしない。両団体とも、試合内容は申し分ないのだが、不透明決着が多過ぎるのだ。

「いい加減に、両リンとか反則とかで終わって欲しくないよ。とくに新日本のフェンスアウトなんてふざけてるよ」

好きな選手や観たいカードがあるから会場に足を運ぶのだが、決着がつかないと騙された感じになってしまう。
リングアウトや反則の線引きも曖昧である。

「猪木と木村もあの結果じゃ、予定通り元国際との抗争で繋いでいくんだろうな」

反則負けに終わった猪木がこのまま黙っている訳がない。完全決着を望むファンのためにも必ず再戦するはずだ。

「猪木はライバルを作るのが上手いよね。これで次の蔵前はカードの心配がなくなったことになるね」

来月も蔵前大会が決まっている新日本プロレス。初戦だけでは終わらせない良くあるやり方だが、あんまり引っ張り過ぎると信用がなくなってしまうのではないか。

「日本人対決は人気あるから、当分は大丈夫だよ。見飽きた頃には、ハンセン、ホーガン、ジャイアントを絡めてくるよ、きっと。」

何かと因縁だの抗争だのを使いたがる新日本プロレスの常套手段なのだろう。何のテーマもなく闘うよりは、確かに興奮する。
それに比べ全日本プロレスは、本場アメリカを意識してかベルトを中心に闘いの構図を描いている。

「全日本はあまりドロドロしたのは似合わないよ。タイトルマッチだけで充分盛り上がるよ」

マイティ井上も阿修羅・原も本隊に敵対するのではなく、全日本プロレスに入団するというスマートなやり方だった。

「あの二人もトップにはなれないけど、中堅のいい位置に行けるんじゃない」

いぶし銀のテクニックが光る井上と天龍というライバル見つけたダンプガイ原。若手の対戦相手として菅原と冬木は申し分ない。
馬場も良い形で獲得に成功したと思う。

「井上と原が組んでも良いし、別れて全日本の誰かと組むのも面白いよ。若手同士もちょとした対抗戦だよね」

課題であった中堅層の補強と若手の育成は、これで何とかなりそうだ。
次期エースの鶴田は言うまでもなく、予想外と言っては失礼だが天龍も鶴田に迫る勢いが出て来た。

「やっぱり全日本は最高だよ。ブロディもインター王者になったしさ、人気でも新日本を抜くよ」

師がブロディを絶賛するように、中身では全日本プロレスが勝っている。
しかし、タイガーマスク一人に人気を持って行かれている現実を、忘れてはならない。
国際プロレスが消滅し、二団体による政権争いは益々激しくなるだろう。
それに、年末恒例のタッグリーグ戦も間近だ、両団体もここらで勝負を仕掛けるに違いない。
引き抜きの行く末や出場チームの予想をしていると、期末試験の勉強など、もうどうでもよくなっていたマサル少年だった。


つづく

 2011年7月8日(金)

  『実録・プロレス道 第25話』

新日本プロレスの田園コロシアム決戦は、猪木も藤波もタイガーマスクも観る前から結果が分かるようなカードだった。
しかし、アンドレ・ザ・ジャイアントとスタン・ハンセンの一騎討ちは予想以上、期待以上の名勝負だったのだ。
ハンセンがアンドレをボディスラムで投げ、一本背負いまで決めるなど、この一試合を観るだけでも行く価値はあった。
まったく、油断したとしか言い様がない。
それに、元国際プロレスのラッシャー木村とアニマル浜口がリング上から宣戦布告というおまけつきだった。

「田コロ行かなくて失敗したな。国際も何か揉めてるみたいだけど、新日本の蔵前は誰が出るのかな」

新日本プロレスの大会宣伝用ポスターに、国際勢はラッシャー木村を筆頭に7人載っている。
全面対抗戦を煽っているのか、新日本の選手に相対する形で、顔写真がズラリと並んでいる。
しかし、マイティ井上は若手を引き連れ全日本プロレス参戦を表明し、マッハ隼人と鶴見五郎は海外へ向かったという。

「全日本も新日本も全員は引き受けられないでしょ。条件とか待遇面で別れたのかな、もう解散してるから内部分裂じゃないしね」

当初新日本プロレス参戦が予定されていた阿修羅・原も、天龍に挑戦する形で全日本プロレスに参戦が決まった。

「原は全日本向きだよ。天龍とはキャリアも境遇も似てるから、良いライバルになるよ。新日本に行ったって、藤波と木村健吾の引き立て役で終わりだよ」

記念大会に向けて陣容が固まりつつある全日本プロレス、NWA王者もダスティ・ローデスからリック・フレアーに交代し、来日も問題なく決まった。
ホーガンは取り消されたが、ファンクス、ブロディ、スヌーカ、サンマルチノ、レイス、マスカラス、シン、デストロイヤーといった贅沢過ぎる外人勢に、井上と原も加わった。

「全日本に比べて新日本のカードは弱いよね、猪木対木村も今さらって感じだよ」

相変わらず師は辛口だ。
新日本プロレスの目玉は、対抗戦とタイガーマスクの覆面剥ぎマッチ。
しかし、元国際勢は木村、浜口、寺西の三人にまで減ってしまい、全面戦争の色はかなり薄れている。タイガーマスクの対戦相手もどこの馬の骨か分からない。
師の言う通り、断然全日本プロレスの方が面白そうなのだ。
過ぎたことを悔いても仕方ないが、新日本の蔵前をやめて田園コロシアムと全日本の蔵前の観戦に、何故しなかったのだろう。
思わぬところで目測を誤ったマサル少年は、どちらの蔵前大会も盛り上がってくれと、祈る他なかったのだ。


つづく

 2011年7月1日(金)

  『実録・プロレス道 第24話』

新学期が始まった。依然、新日本プロレスとタイガーマスク人気は衰えない。
全日本プロレス寄りになったマサル少年は、友人の間で若干浮き気味である。
だが、青臭い中学生より、師と話してた方が楽しい上に勉強になる。

「国際が潰れたよ、それと新日本が国際主力全員との対抗戦を発表したぞ」

遂にというか、やっぱり国際プロレスは崩壊してしまった。

「今度の蔵前のメインは猪木対木村じゃないかな」

10月には両団体が、旗揚げ10周年記念大会を蔵前国技館で行う。
9日の全日本プロレスに対して、あえて前日8日にぶつけてきた新日本プロレス。この強気の姿勢は、国際プロレス吸収という荒技があったからなのか。

「噂だけど、全日本に上田とホーガンが上がるらしいよ、馬場も抜け目ないね」

まだら狼・上田馬之助の参戦は正式決定していた。新日本プロレス同様シンと凶悪タッグを結成するためだ。ホーガンはまだ分からないが、引き抜き合戦は続いているようだ。

「マサルは田コロに行かないのか?ジャイアントとハンセンは観るべきだよ」

毎月のように大会場で興行を打つ新日本プロレス。
田園コロシアム大会の目玉として、アンドレとハンセンの一騎討ちが決定した。
師の言う通り、スーパーヘビーのド迫力ファイトは観てみたい。しかし、その他のカードは今一つなので、テレビ観戦で良しとしていた。
それより、来月の蔵前二連戦の方がもっと観たいのだ。

「全日本と新日本どっちに行くんだ。両方行けるなら最高だけど、そうもいかないか」

田園コロシアムを諦めた以上、当然両方観に行くつもりでいた。
しかし、後楽園ホールと違い、高額な蔵前国技館のチケット。さすがに二日連続ではお小遣いだけでは間に合わない。

「早くしないと、良い席が無くなるから難しいよな。10周年だしな」

師の言う通りだ、出来ることなら特別席で興奮したい。だが今回は記念すべき10周年大会、生観戦に意義がある。
安い席ならなんとかなると、両日二階席に決めたのだ。
足りないお金は母親に泣き付き出してもらったが、年内はもう観に行かないという条件が付いてしまった。
よーし!これでチケットの心配はなくなった、あとはカードが出揃うのを待つだけだ。
新日本プロレスも蔵前に力を入れてるはずだから、田園コロシアム決戦は大したことないだろうと、半ばバカにしていた。
しかし、それは大きな間違えであることを、マサル少年は知らされるのだった。


つづく

 2011年6月24日(金)

  『実録・プロレス道 第23話』

マサル少年の参加するファンイベントは、後楽園ホール近くの会場で開かれた。
鈴木さんという代表者の挨拶から始まり、マニア好みの景品が当たる抽選会や全国のファンクラブ代表者による活動報告、全日本プロレスのフロントの人も来場し、質問に答えるなど賑やかに進んだ。
"休憩のあと、ゲスト登場"のアナウンスを聞き、とりあえずトイレに行くことにした。
ドアを開けると、目の前に外人の大男がいるではないか!
ビビりながらも確認すると、ジプシー・ジョーがそこに立っていたのだ。
ゲストは放浪の殺し屋ジプシー・ジョーだったのか。
国際プロレスの常連外人であったが、今シリーズから全日本プロレスに乗り込んで来たのだ。
驚きのあまり、何も出来ずに立ちすくんでいると、バシッと背中に一撃食らわし、何食わぬ顔でトイレを出て行ってしまった。
張り手ではない、長い金属のような物で殴られた感じがして、会場に戻っても背中の痛みは消えない。
ゲストとして、日本テレビ倉持隆夫アナウンサーと共に登場したジプシー・ジョーは、片手に平たい刀を持っている。ご丁寧に進行係は゛肉切り刀゛と説明してくれた。
あれの横っ面で殴られたと知って更に痛みは増し、集中出来ぬうちに、楽しみにしていたイベントは終了してしまった。
嫌な予感が当ってしまったと思いながら会場を出る時

「熱心だね、全日本プロレスを応援してね」

と倉持アナに直接声をかけられたのは嬉しかった。
全日本プロレスと倉持アナは応援するが、ジプシー・ジョーだけは応援しないと決め後楽園ホールに向かった。
ミル・マスカラス対リッキー・スティムボートという、夢の対決目当てに会場は超満員、立ち見も溢れている。早めにチケットを購入して本当に良かった、席は前から二列目放送席の真後ろだ。
先ほど声をかけてくれた、倉持アナは覚えていてくれた

「来てくれてありがとう、マスカラス楽しみでしょ」

の優しい言葉に倉持アナと勤務する日本テレビは素晴らしい、24時間テレビの募金もしなければならないとこの時思った。
番外編のタッグマッチもあり、試合は予想通りの盛り上がりを見せ満足だった。
マスカラスの投げ入れたオーバーマスクに一瞬だけ触ったり、前日デビューしたという新人選手と握手もした。もちろん募金も忘れない。
とにかく楽しい一日だった、大雨やジプシー・ジョーなど気にならなくなっていた。
なんとなくだが、師の言う全日本プロレスの良さが分かり始めた。
夏休みの締め括りに、全日本プロレスを選んで正解であったと、しみじみ感じるマサル少年だった。


つづく

 2011年6月17日(金)

  『実録・プロレス道 第22話』

新日本プロレスによる引き抜きに対し、報復に出た全日本プロレス。
注目の次期シリーズの日程と主要カードが発表された。
開幕戦の8月20日と22日に後楽園ホール大会があるが、噂されていたミル・マスカラスとリッキー・スティムボートの一騎討ちは、22日に決まった。
対戦カード発表前に22日のチケットを購入していたマサル少年は、運が良いと思った。

「日程で後楽園が二日間あったけど、マサルが観に行く方で良かったな。俺も行きたかったよ」

師はマスカラスの大ファンだ、昔ファンクラブを創りりかけたこともあるし、マスカラスウォークなるモノマネも得意にしていた。

「ファンクラブ創るって雑誌に告知したんだよ、もの凄い応募が来てさ、怖くなってやめちゃったよ」

無責任過ぎると思ったが、当時のマスカラスファンの数を考えれば無理もない。
今でもその人気が落ちないマスカラスは偉大だ。

「マサルはファンクラブとか入らないのか」

師と同じで興味はある。
全日本プロレスと新日本プロレス、それにスタン・ハンセンのファンクラブは資料を取り寄せ調査済みだった。
しかし、お金も掛かるしパッとしないので入会するつもりはなかった。

「自分でやってみたらどうだ。他が気に入らないなら、理想のファンクラブを自分の手で創るんだよ」

゛理想のファンクラブ゛と聞いて一瞬その気になったが、面倒くさがり屋の性格がすぐ打ち消した。
気ままに、好きなようにプロレスを楽しむ方が性にあっているのだ。
たまに゛ファンの集い゛のようなイベントに、参加するぐらいが調度良い。
22日も観戦前に参加する予定だ。

「ゲストも来るんだろ、マスカラスだといいね」

ゲストは、日本テレビの倉持隆夫アナウンサーのほか人気レスラーとなっていた。
マスカラスやスティムボート、馬場や鶴田のような超大物は来るはずない。
良くて天龍かアニバル、ドクトル・ワグナーだろうと期待などしていない。
待ちわびた観戦当日は朝から大雨だった。
夏休み最後のプロレス観戦なのに、嫌な感じがして仕方がない。
気を取り直してイベント会場に着いたが、マサル少年の嫌な予感は的中してしまったのだ。


つづく

 2011年6月10日(金)

  『実録・プロレス道 第21話』

馬場は黙っていなかった、新日本プロレスの常連悪役で、猪木と死闘を繰り広げていたタイガー・ジェット・シンを引き抜いたのだ。

「シンが来てもしょうがないんだけどね」

確かにブッチャーを獲られたから、同じ悪役のシンを引き抜くのでは芸がない。

「まぁ新日本で凶悪コンビを結成されるよりはいいけど」

ブッチャー&シンといえば、オールスター戦で実現し評判もまあまあだった。その二人が、猪木&坂口の黄金コンビやハンセン&ホーガン、アンドレと闘えば盛り上がるだろう。

「タッグでだめなら仲間割れさせても面白いよ。そっちの方が観たいよ」

凶悪世界一決定戦もまた、ファン心をくすぐる。その辺を考えて、馬場はシンを引き抜いたのだろう。

「そういえば最近、天龍が良くなってるね。馬場と鶴田のインタータッグに挑戦するよ」

 

戸口退団により、全日本プロレス第三の男に急浮上した天龍源一郎。
ディック・スレーターが交通事故の後遺症により帰国し、ビル・ロビンソンがパートナーに抜擢したのだ。夏休みの後楽園ホールのタイトルマッチ、マサル少年はチケットを購入していた。
初めて天龍を生で観た、まだ線は細いが闘志剥き出しのファイトが印象的だった。まだまだ馬場と鶴田のレベルには程遠いが、楽しみにな選手には違いない。この男なら戸口の穴は埋められる。

「天龍は一皮むけたね、ガッツがあっていいよ。どんどん上の外人に当てていけば強くなるよ」

馬場、鶴田、天龍の三本柱が充実すれば、若手を育てる時間も出来る。
ただ、ジュニア選手不在とタイトルがないのが気に掛かる。世はタイガーマスクによるジュニアブームなのだ。

馬場はジュニアヘビーをプロレスと認めてないからな」

とはいうものの、全日本プロレス次期シリーズは、マスカラスブラザーズ、リッキー・スティムボートに加え大勢のメキシカンが参戦する。

「馬場もジュニアが人気あるのが分かってるんだよ。所属のジュニアがいないから、外人に頼るんだな」

確かに外人に強い全日本プロレスらしいやり方だ、しかもその参加外人の中にチャボ・ゲレロがいるではないか!
チャボ・ゲレロは新日本プロレスで、藤波や木村と好勝負を繰り広げた男である。
両団体による引き抜きは、まだまだ続いていたのだった。


つづく

 2011年6月3日(金)

  『実録・プロレス道 第20話』

アマレス重量級最強と云われ新日本プロレスに入団した谷津嘉章が、蔵前国技館で国内デビューした。
期待に応えることが出来なかったどころか、良いところなく血ダルマにされ惨敗した。
そして、再び海外へ修行に出たのだ。

「猪木も厳しいね、あれじゃ谷津が可哀想だよ。ハンセンとブッチャーはイキイキしてたけどね」

そりゃそうだろう、新人相手にベテランのトップ外人が二人がかりでやりたい放題なのだから。
大事な新人を潰すようなことをして、新日本プロレスは大丈夫なのか。

「あれが猪木のやり方なんだろうね、自分が若い時にやられてたから。それより、また引き抜きだ。今度は戸口とマードックだ」

全日本プロレス第三の男タイガー戸口と、次期世界王者候補のディック・マードックの新日本プロレス移籍が決まったらしい。
外人なら分かるが日本人所属選手まで引き抜きとは、全日本プロレス潰しへ向けて勝負を急いだとしか思えない。

「戸口は生え抜きじゃないし、マードックだって条件が良い方に決めたんだろ」

ブッチャー、マードック、戸口…新日本プロレスはこの大型選手三人をどう使いこなすのか興味深い。
それとも飼い殺しを見越してのただの嫌がらせなのか。

「三人ともチャンスがなかったから、新日本で活躍出来ると良いんだけどね」

新日本プロレスを非難すると思いきや、プロレス界全体を考える発言に、師の器の大きさを感じた。

「しかし馬場もやられっぱなしでいいのかねぇ。ジャイアントとか引き抜けばいいのに」

やはり全日本プロレスが、窮地に追い込まれていると感じているのだ。
寛大と思った矢先の言葉に、思わず笑ってしまった。
もしアンドレが全日本プロレスと契約したら、馬場との対決やタッグ結成など夢は膨らむ。

「レスラーはデカくないと迫力が伝わらないよ。でもタイガーマスク人気を見ると、古い考えなのかな」

アメリカナイズされた本格派全日本プロレスに対して、ストロングスタイルとタイガーマスク人気を軸とし引き抜きまで辞さない新日本プロレス。
そして遂に馬場・全日本も動きだし、この引き抜きバトルも泥沼化して行くのであった。


つづく

 2011年5月27日(金)

  『実録・プロレス道 第19話』

タイガーマスク効果で新日本プロレスの会場は連日満員。
すると突然白いジャケットの大男が、片手にベルトを携えてリング上がったのだ。
アブドーラ・ザ・ブッチャーだ!
ブッチャーはIWGP参戦を表明、新日本プロレスに戦場を移すことになったという。
ブッチャーが加わりカードに厚みが出る、猪木との一騎討ちも注目される。

「円満な移籍じゃない、引き抜きだよ。ブッチャーだけじゃ終わらないよ、次は誰を狙ってんのかな」

しかしなぜ、新日本プロレスはブッチャーを引き抜いたのだろうか?
人気はあるが、実力は下り坂に差し掛かっているように見える。

「人気外人を引き抜けば全日本は苦しくなるだろ、全日本は外人でもってるんだからさ」

新日本プロレスが仕掛けた、全日本プロレス壊滅作戦!その第一弾が、ブッチャー引き抜きというのか。

「さすがに世界王者は無理だけど、それに近い外人は動くと思うよ」

NWAとAWAの世界王者は残るとしても、毎シリーズ呼ぶことは出来ない。
王者以外が無名の外人なんてことになったら、全日本プロレスの会場は閑古鳥が鳴くだろう。

「馬場はどうするんだろう。引き留めるのかやり返すのか」

新日本プロレスはIWGPによるタイトル統一だけでは飽き足らず、日本マット界統一まで睨んでいたのか。全日本プロレスを思う師は、さぞかし辛いだろう。

「まだまだ全日本の方が、良い外人はいるからね。被害を最小限にしなきゃ」

混乱する全日本プロレスを尻目に猪木はMSGリーグ戦を連覇、大型新人谷津嘉章の国内デビューと新日本プロレスは畳み掛けた。

「谷津デビューの蔵前に行って来るよ。ブッチャーがどこまでやるか楽しみだよ」

猪木&谷津対ハンセン&ブッチャーというカードを見て、師とは逆に新日本プロレス初登場のブッチャーよりも谷津の活躍を期待する声が多い。
谷津は鶴田のように、凱旋試合で良いところを見せることが出来るのか。
エース外人のハンセンと初仕事で燃えるブッチャーが、オリンピック経験があるとはいえ、たかだか新人に花を持たせるとは考えにくい。
それにしても、師が新日本プロレス観戦とは珍しい。まるで敵地に偵察に行くようだと思うマサル少年であった。


つづく

 2011年5月20日(金)

  『実録・プロレス道 第18話』

新日本プロレスはIWGP推進のため、藤波の持つジュニア王座を除く全てのタイトルを返上した。
メインタイトルなしの興行でどう乗り切るのか、タイガーマスクに期待を寄せるが次回参戦は未定だ。
全日本プロレスでは、馬場がチャンピオン・カーニバル通算6度目の優勝を飾っていた。

「今年はブロディが優勝すると思ったけど、馬場はまだまだやるね」

師は馬場の優勝とブロディ活躍が嬉しいのだ、丸腰の新日本プロレスに対して余裕の笑みさえ浮べる。

「全日本でインター王者を決めるトーナメントが始まったね。ブロディが楽しみだよ」

大木金太郎が返上したインターナショナル王座を、今後全日本プロレスが管理することになり、トーナメントで王者を決定するという。

「力道山から続くベルトだからね、馬場も巻いてたし。全日本に納まって何よりだよ。」

力道山ゆかりのインターナショナル王座、その至宝を受け継ぐ全日本プロレスは日本プロレス界の本流に乗ることになる。
しかし、伝統のベルトが増えることにより、ヘビーのベルト三本をどう格付けするのか。

「難しい問題だけど、誰がインター獲るかで方針が決まるんじゃない。」

PWF、UN、インターナショナルに加え、NWAとAWAの世界王座も絡んでくるのだ。
タイトルマッチは面白い、しかし、一つの団体に何人もチャンピオンがいるのはどうかと思う。

「常連外人がインター王者になればいいんだよ。それに馬場や鶴田がダブルタイトルでやるんだよ。」

常連外人か、師はよっぽどブロディに獲らせたいのだ。だったらはっきりブロディと言ってしまえばいいのに。

「ベルトを一本化するIWGPも良いけど、いろんなベルトを見れるのも良いもんだよ。」

残念ながら師の願いは叶わず、怪我のため欠場したブロディは復活インターナショナル王者になれなかった。
しかし師の予測通り、常連外人のドリー・ファンク・ジュニアが王者になったのには驚いた。

「テリーも引退しちゃうし、ジュニアはこれでシングルでもやっていけるな。」

馬場、鶴田、ドリー、ブロディが全日本プロレスの中心になるだろう。
そんな時、誰もが忘れかけていた男が、とんでもないことをしでかしたのである。


つづく

 2011年5月13日(金)

  『実録・プロレス道 第17話』

学校では、タイガーマスクの正体は小林邦昭が有力だった。メキシコにいるというだけで、栗栖正伸やグラン浜田という意見は論外だ。
誰も佐山サトルのことを知らない、今佐山のことを話しても誰も信じないだろう。
マサル少年は、佐山サトルを思い出しつつあった。
確か、異種格闘技戦で負けたあと海外修行に出た選手だ。
古本屋で過去の専門誌を何冊か買い求めた、幸運にもその中から佐山サトルを見つけだしのだ。
長髪でなかなか二枚目だ、゛佐山聡゛と紹介されている。メキシコでミドル級王者になった写真や、イギリスで活躍している記事を師にも見せた。

「ほらね言った通り佐山だろ」

肌の感じや背格好もドンピシャである。

「あんな特殊な動きが出来るのは、佐山ぐらいしかいないよ。サミー・リーってあのまんまなんだろうね」

イギリスでは、ブルース・リーの従兄弟サミー・リーと名乗っていた佐山、映画゛死亡遊戯゛のトラックスーツを身に付けている。
蔵前で観たあの蹴りあのフットワークなら、カンフーの達人という触れ込みも頷ける。

「タイガーマスクは人気出るよ。でも同じジュニアの藤波はどうするんだろう」

藤波辰巳がジュニア王者である以上、ジュニアの実力者は藤波絡みになるだろう。
タイガーマスクを日本定着させても、二流三流の対戦相手じゃ話にならない。

「まさか藤波とタイガーの因縁を作る訳ないし、藤波はヘビーに転向するのかな」

団体内の人気者同士をぶつけても、会社に旨味はなさそうだ。ならば、ジュニア戦線はタイガーマスクに任せるとして、猪木の後継者でありエース候補の藤波のヘビー転向の方が考えられる。

「まだ藤波もベルトを持ってることだし、タイガーもそれなりに上手く使うんじゃないの」

結論として、師には新日本プロレスはどうでも良さそうに見えた。

「IWGPもいつになるのかな、それより全日本も負けてられないよ」

今年人気を盛り返して来た全日本プロレスであったが、タイガーマスクに人気を奪われそうなのだ。
しかし、まだまだ馬場・全日本には奥の手があった。


つづく

 2011年5月6日(金)

  『実録・プロレス道 第16話』

゛ジャーマン・スープレックス・ホールド゛
プロレスの神様、カール・ゴッチが編み出した最高級の必殺技だ。
その難易度の高い技を使いこなすレスラーは少ない。
それだけに、この技でキッドを葬ったタイガーマスクは、かなりの実力者と見てまず間違えないだろう。
この日メインを食ってしまったタイガーマスクは誰なんだ、家に帰ったマサル少年は専門誌を漁りだした。
隅々まで探したが、タイガーマスクらしきレスラーは見つからない。
明日の学校に備え床についたが眠れない、暗い部屋で目を閉じたままビートたけしのオールナイトニッポンを最後まで聴いた。
今日の蔵前に居たという、放送作家の高田文夫もタイガーマスクを熱く語っていた。

明日のワールドプロレスリングと東京スポーツを見てから対策を練ろう。

睡眠不足の翌日、学校でタイガーマスクの質問攻めにあうマサル少年は、ちょっとしたヒーローだった。
あえて結果は教えず、今晩の放送を楽しみにするよう焦らしたりもした。
長過ぎる授業が終り、執拗に食い下がる友人たちを振り切ると、家に帰らず東京スポーツを買いに急いだ。
当然、東京スポーツにタイガーマスクの正体など書かれているはずなどない。
しかし、記事を読むだけでも評価の高さが伝わってくる。
別冊ゴングとプロレスの発売が待ち遠しい、早く週刊化されれば良いのにと思う。
夜8時、昨日観た試合をテレビで確認している、録画も忘れない。
放送終了後すぐ再生しようとした時、電話が鳴りだした。

「テレビ観たよ、いい試合で良かったな」

予想通り師からであった。
試合の評価より、タイガーマスクの正体は分かったのだろうか。

「あの肌の色と体形は日本人に間違えないよ」

だからいったい誰なんだ!
新日本プロレスの若手か新人か、はたまたフリーレスラーか。
とにかく名前が知りたいのだ。

「あれは佐山だよ、佐山サトルだ。確かメキシコかイギリスにいたはずだよ。」

一発で正体を見破るとは流石だ、その後一言二言話して師は電話を切ったが、よく覚えていない。
そして再生された画面を見つめ、佐山サトルの顔を思い出そうとするマサル少年は、また夜更かしをしていた。


つづく

 

 

 

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